「集団免疫」ワクチン接種で見えてきた?

ワクチン浸透に貢献している自衛隊の大規模接種センター

「ワクチン頼み」に批判の多い日本

 東京都は16日、新型コロナウイルスの新規感染者が831人だったと発表、25日連続で前週の同じ曜日を下回った。このところの激減の理由について、多くの専門家がはっきりとした見解を示せていないが、「緊急事態宣言の成果よりもワクチンの効果を積極的に評価すべきだ」と強調するのは独ベルンハルト・ノホト熱帯医学研究所研究員で医師の村中璃子氏だ。人口の約52%が2回接種を終え、「ワクチンによる集団免疫が見え始めている」と指摘する。

 集団免疫とは、ワクチン接種や感染により抗体を持つ人の割合が増えることにより、流行の爆発を回避できるようになる状態を指す。

 村中氏は「60~70%のワクチン接種率で初めて集団免疫が成立し、感染が沈静化すると思われがちだが、集団免疫の効果は30%程度から『感染者や重症者が増えにくい』などといった形で実感され始めるのが普通だ。厳密には、マスクや行動制限がなくても1人が何人に感染させるかの指標である実効再生産数が1以下になることが『集団免疫の確立』の定義だが、日本ではこの点が逆説的に捉えられている」と解説する。

 2回接種率が人口の半数を超えた今でも、デルタ株の蔓延(まんえん)で接種していても感染する「ブレークスルー感染」を懸念するなど、「ワクチン頼み」は批判されがちだ。政府分科会の尾身茂会長も「ワクチンはかなり有効だが、何でも自由になるということはあり得ない」と述べている。

村中氏「人流抑制だけでは永遠に元の生活に戻れない」

 こうした状況は「接種控えを助長しかねない」と懸念する村中氏。政府や専門家のメッセージの出し方も日本と海外では大きな差があるという。

 「日本では、接種率が上がっても集団免疫はできないので元の生活はできないといわれるが、欧米では逆に、元の生活に戻るためには1人でも多くが接種し、集団免疫を成立させることが必須だとアナウンスしている」という。

 北欧のデンマークでは今月6日、新型コロナに関連した行動制限を全面的に撤廃した。当時の接種率は72%(医療関係者99%以上、50歳以上は95%)で、接種対象者であっても若年層では12~15歳では基礎疾患のある人以外、推奨はされていない。「強力な集団免疫が期待できる現状では、若年層のコロナは『普通のかぜ』であるとして、感染をある程度許容していくことも呼びかけられている」と村中氏。

 国内では19都道府県で緊急事態宣言が今月末まで延長されているが、村中氏は「人流抑制一辺倒では永遠に元の生活に戻ることはできない」と訴える。「国はリーダーシップを取り、世代別の接種率など具体的な数値目標に沿った緩和内容を提示していくべきだ」

■村中璃子(むらなか・りこ) 医師、ジャーナリスト。京都大学医学研究科非常勤講師、ベルンハルト・ノホト熱帯医学研究所研究員。世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局で鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ対策に携わった。科学誌「ネイチャー」ほか主催のジョン・マドックス賞受賞。近著に『新型コロナから見えた日本の弱点 国防としての感染症』(光文社新書)。

関連記事

  1. 阪神、阪急、伊勢丹…なぜデパ地下でクラスターが?

  2. 【ギモン解消!!ワクチン接種Q&A】大規模接種センターへは無料バス

  3. コロナ禍で広がるオンラインツアーの魅力

  4. ナゼ?知的な人や若者も信じてしまうコロナやワクチンめぐる「陰謀論」

  5. 【ギモン解消!!ワクチン接種Q&A】当日2回目の予約も、ファイザー製は3週間後

  6. 【ギモン解消!!ワクチン接種Q&A】ワクチン2回接種者対象に「FUJIYAMAタワー」入場料が無料に…

  7. 【ギモン解消!!ワクチン接種Q&A】ワクチン完了後も要注意「ブレイクスルー感染」

  8. 【ギモン解消!!ワクチン接種Q&A】接種者向け特典、温泉旅館の宿泊2割引も

  9. 東京五輪まであとわずか。 米選手団の姿なく~ホストタウン世田谷

logo logo

連載

PAGE TOP