【緊急事態解除後のコロナ対策】ワクチン2回接種で重症予防効果はあるのか?

ワクチンの“持続可能性”には未知の部分がある

中和抗体だけでなく細胞性免疫も獲得

 新型コロナウイルスは、ワクチン2回接種で封じ込めるのは無理なのか。イスラエルでは3回目の追加接種(ブースター接種)が8月からスタートし、フランスやドイツでも9月から実施。英国や米国も追加接種の予定だ。その理由として、2回接種後、経時的に抗体価が下がり、感染予防効果や発症予防効果が低下する可能性が示唆された。

 3回目接種後には、ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンのいずれにおいても抗体価が有意に増加したと報告されている。デルタ株に対し、ワクチン2回接種の効果はやはり低いのか。

 「ワクチン接種が進んだ国では、感染者数が大幅に下がりましたが、デルタ株の出現後、再び増加に転じています。日本でも3回目の接種は議論されています。しかし、各国ともに2回接種による重症化予防効果は変わらず認められており、まずは2回接種率を高めることが重要です」

 こう話すのは、国立感染症研究所感染症疫学センター予防接種総括研究官の多屋馨子医師。長年、さまざまなワクチン接種の進展に尽力している。

 たとえば、米国では、ワクチン接種率上昇の6月までは新規感染者数が減少傾向だったが、7月に増加に転じ、8月には新規感染者数が増えた。そのほとんどがデルタ株である。新規入院患者数も50歳未満の割合が高くなった。とはいえ、ワクチン接種者イコール新規感染者ではない。つまり、州や郡によっては、日本と同じように10代など低年齢層でワクチン接種が進んでおらず、それらの人々が感染しやすい傾向が続いていたと考えられる。

長期的な予防効果は「未知」

 「現在、日本で使用されている新型コロナワクチン接種では、中和抗体のみならず細胞性免疫(別項)も作られます。それは、毎年国内で接種されている季節性インフルエンザワクチンとは大きく異なる点ともいえます」

 インフルエンザワクチンは、ウイルスの表面のヘマグルチニン(HA)をターゲットにしている。HAとは、細胞に侵入するときに受容体にくっつく重要な部分で、新型コロナウイルスでいえばスパイクタンパク質の部分にあたる。インフルエンザワクチンでは、インフルエンザウイルスのHAが含まれる画分を精製して不活化ワクチンにしている。

 一方、新型コロナワクチンは、新型コロナウイルスのスパイク遺伝子をワクチンにしている。これらが筋肉細胞や抗原提示細胞に取り込まれた後、スパイクタンパク質を作ることで、それに対して免疫応答が起こり、抗体や細胞性免疫が産生されるようになる。

 「仮にワクチンによって誘導された抗体価が低下したとしても、細胞性免疫が維持されれば、感染しても重症化を防ぐことにつながります」

 インフルエンザと比べて、新型コロナウイルスとの戦いは期間が短いゆえに、ワクチン接種による長期的な予防効果には未知の部分がある。検証が進むまで油断しないことが肝心だ。

■細胞性免疫とは 細胞性免疫を担う代表格は、ヘルパーT細胞と細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)。抗原提示細胞から情報を得たヘルパーT細胞は、B細胞に指令して抗体を作らせ、ウイルスを排除する。同様に抗原提示細胞から情報を得たキラーT細胞は、ウイルスに感染した細胞を攻撃して排除する役割を担う。


■多屋馨子(たや・けいこ) 国立感染症研究所感染症疫学センター予防接種総括研究官。1986年高知医科大学(現、高知大学医学部)卒、小児科医。大阪大学医学部附属病院・関連病院小児科、同大医学部微生物学講座・小児科学講座を経て、2001年から国立感染症研究所へ。感染症情報センター主任研究官、2002年から室長、2021年4月より現職。

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