【緊急事態解除後のコロナ対策】ワクチンで得られる免疫は抗体だけではない

街が活気づくのはいいが、感染対策も決して怠ってはならない

“ブレイクスルー感染”でも重症化予防効果は変わらず維持

 半年程度前は、新型コロナワクチン2回接種で、感染拡大を防ぎ、かつてのような日常生活を取り戻せることが期待されていた。しかし、諸外国はもとより国内でも、今夏にはデルタ株の占める割合が急増。唾液や飛沫中に多量のウイルスを含み、マイクロ飛沫感染もあって、一気に感染者数を押し上げた。さらに、カッパ株、ラムダ株、ミュー株と新たな変異株も後を絶たない。

 日本ではワクチン2回接種完了者は9月半ばで5割を超えたが、希望しても2回接種がまだ終わらない人がいる中、3回目の追加接種の話まで出ている。諸外国で3回目の追加接種が開始されているからだ。新型コロナウイルスに翻弄され、ワクチンに右往左往する状態はいつまで続くのか。

 「新型コロナワクチンは、効果の見えるものとして多くの方に受け入れられていると感じます。副反応を疑う報告はありますが、重要な感染予防方法の一つとして捉えていただいています。これからもワクチンについて知識を深め、上手く活用していただきたいです」

 こう話す多屋医師は、国立感染症研究所の「予防接種情報」(国立感染症研究所 予防接種情報で検索)のトピックス「新型コロナワクチンについて」も手掛け、常に国内外の科学的なエビデンスに基づく新型コロナワクチンの新しい情報を提供している。

 「新型コロナワクチンの有効性は高いのですが、100%感染を防ぐものではありません。また、時間の経過とともに抗体価が減衰することも報告され、国内でも追加接種について議論されているところです。が、ワクチンで得られる免疫は、抗体のみではありません」

 17歳以上の約480万人を対象としたイスラエルの研究では、ファイザー社のワクチン2回接種後、約1万3000人がPCR検査で陽性となり、このうち348人が重症化したという(第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料より)。さらに、ワクチン接種後の時間経過とともに、新規感染者数が上昇する傾向が見られた。そのため、イスラエルでは3回目の追加接種が8月24日現在、30代以上を対象に進行中だ。

 「ワクチン2回接種後14日以降の感染(ブレイクスルー感染)は、軽症のことが多いと報告されています。感染に気づかないこともありますが、発熱などの発症2日前からウイルスが排せつされるため、飛沫感染につながります。2回接種後もしばらくは、マスク着用などの予防に努めていただきたいと思います」

 気が抜けない状況は、まだ続くが、2回接種後の感染で軽症が多いことは、ひとつの励みになる。

 緊急事態宣言が解除になり、ようやくデルタ株による感染拡大が一段落した。とはいえ、油断すれば第6波の心配もある。ワクチン接種が進む中、次々と変異株に姿を変える新型コロナウイルスにどう立ち向かい、いかに感染予防を続けるべきか。国立感染症研究所感染症疫学センター予防接種総括研究官の多屋馨子医師に話を聞いた。

 ■ブレイクスルー感染とは 新型コロナワクチン2回接種後、体内に抗体などが産生される2週間以上を経た後、新型コロナに感染すること。諸外国の研究では、ワクチンによる重症化予防効果は変わらず維持されるものの、感染予防効果、発症予防効果が半年ほど経つと下がっている可能性があることが示唆されており、その結果、ブレイクスルー感染が起きると考えられている。

■多屋馨子(たや・けいこ) 国立感染症研究所感染症疫学センター予防接種総括研究官。1986年高知医科大学(現、高知大学医学部)卒、小児科医。大阪大学医学部附属病院・関連病院小児科、同大医学部微生物学講座・小児科学講座を経て、2001年から国立感染症研究所へ。感染症情報センター主任研究官、2002年から室長、2021年4月より現職。

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