【平賀充記の若者解体新書~キーワードで読み解くZ世代のトリセツ】②過剰忖度世代

過剰忖度で進化した最新で細心の投稿テク

周りの評価に超敏感

 忖度というと政治家や権力者に対するオトナの配慮といったイメージがあるかもしれません。しかし実はZ世代の若者も忖度しまくっています(#過剰忖度世代)。連載1回目(記事はこちら⇒【平賀充記の若者解体新書】➀いいね!社交界)でもお伝えしたように、SNSは相互監視の村社会。彼らは「常に誰かに見られているリスク」を念頭に置いてコミュニケーションをとる習性が染みついているのです。

 SNSでの炎上は、いまや日常茶飯事のごとく発生します。誹謗中傷のような書き込みが社会問題となることもしばしばですし、それがある日突然、自分の身にふりかかることさえあるのです。炎上自体は全世代にかかる問題ですが、Z世代にとってはより深刻です。ある投稿が原因で友達からSNSで村八分にされる。これが若者の最大の恐怖です。友だちに認めてもらうことはうれしいのですが、自分アピールが強すぎると逆に叩かれる。だから彼らは、友達に対して細心のリスクマネジメントをしながら、SNSの中で日々を生きています。

自分で「♯リア充アピール」

 どのくらい彼らが友達に忖度しているか。インスタグラムを見ていると、こんな投稿が見つかります。写真は旅先で撮られた女の子グループのキラキラした自撮り写真。いくつも並べられたハッシュタグの中には「♯リア充アピール」の文字。えっ? 自分でリア充って言っちゃうんだ……と一瞬たじろぎますが、これには理由があるのです。

 実は、友達から「うわ。リア充アピールしてるよ」と言われないように、先回りして予防線を張っているんです。若者たちは、自分の一挙手一投足が他人に見られている意識を強く持っています。「友達が見たらどう思うか」を常に考えてしまうのです。うかつに投稿して「出た、リア充アピール」「意識高い(笑)」「人と違う自慢、ウザい」などと思われたらショック。思われるだけでなく書き込まれたら致命的です。今まで仲間うちで仲よくやっていたのが、たったひとつの投稿によって仲間外れにされてしまう。まさにSNS村八分の恐怖。だからこそ、一見よくわからない、そしてある意味で非常に高度な#セルフツッコミディフェンスを身につけるようになったのです。すごくないですか。

 「先回りして予防線を張る」というSNS的な処世術は、職場のリアルコミュニケーションにも現れます。ありがちなのが「自分、実は承認欲求強めなんで」というセリフ。これには、自分のやった仕事に対してちゃんと褒めてほしい。だけどあまりに「褒めて褒めてオーラ」が出すぎているのもイケてない、という思考が働いています。

アリよりのナシ、ナシよりのアリ

 「このパスタ、普通においしくない?」。最近、こうした表現をよく耳にします。しかし、よく考えたら「普通においしい」って、「ちょっとおいしい」でもなく「意外とおいしい」でもなく、非常に不思議な表現です。他にも「ナシよりのアリ」とか「アリよりのナシ」とか。またツイッターでは「わかりみが深い」という言葉をよく見かけます。これは単に「わかる」と完全に言い切らないときに使う言葉のようです。

 実は、何かを評価する際に使う若者言葉が、どんどん曖昧化しているのです(#限りなく曖昧に近いグレー)。良いとも悪いとも言い切らない。断定はしない。これも、他人に見られていることを前提にした、過剰な忖度が背景にあります。オンラインの世界では、ひとつの話題に対してさまざまな意見や評価があふれています。そんな中ではっきりと断定するには勇気がいります。

 例えば「この新しい企画、どう思う?」と若手に聞いた時、「自分的には普通にいいと思いますけど……」と返ってくることありませんか。この「自分的には」や「普通に」といった表現には、明らかに発言の主体性を薄くしようという心理が透けて見えます。いいとも悪いとも言い切らない。断定はしない(#マイルディング)。何ごとにもエクスキューズの余地を残すことがZ世代の処世術なのです。

トリセツ…心理的安全性の提供

 オトナからすると、言いたいことがよくわからないとか、自己主張が希薄だと思えるかもしれません。しかし彼らは彼らで、本音はしっかり持っています。職場で同僚からバカにされないだろうか、上司から叱られないだろうか……。常にまわりの目を気にしてしまい、主張が弱めなのです。

 そういった意味でも重要なのが、「心理的安全性」の提供です。心理的安全性とは、他人の反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出すことのできる環境を指す心理学用語。心理的安全性が低いことで引き起こる4つの不安は「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「邪魔をしていると思われる不安」「ネガティブだと思われる不安」といわれます。

 これらの不安は、まさに過剰忖度なZ世代が陥りやすい心理状態です。彼らが「自分はここにいていいんだ」「何を言っても否定せずに受け止めてもらえるんだ」と感じる環境づくりを意識してください。

 そもそも心理的安全性は、あのグーグルが「心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである」と発表したことから、注目を集めるようになり、いまや組織開発には欠かせないキーワードです。その概念がZ世代にもドンピシャというわけです。


■平賀充記(ひらが・あつのり) 多様な働き方研究家。リクルートにて、FromA、タウンワーク、とらばーゆ、ガテン、はたらいくなど、主要求人メディア編集長を歴任、メディアプロデュース統括部門執行役員を経て「ツナグ働き方研究所」主宰。専門分野や若者マネジメントやリモートコミュニケーションなど。「東洋経済オンライン」「読売オンライン」など寄稿多数。近著に「神採用メソッド」(かんき出版)「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」(アスコム)がある。

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