【平賀充記の若者解体新書~キーワードで読み解くZ世代のトリセツ】④キャラ多面体

自分のキャラ的に…

 Z世代の若者たちは「キャラ的に」とよく口にします。例えばこんな具合です。「え〜? 私が歓迎会で一発芸なんて、キャラ的になくない? ムリムリ!」「あの部長がそんなこと言うなんて、キャラ的に想像つかないんだけど…」などなど。周囲から見て誰がどんなキャラクター(=性格)であるかを、強く意識していることがわかります(#キャラコンシャス)。

 彼らが、ここまでキャラを気にすることになったのも、実はSNSが背景にあります。24時間365日、オンラインの世界で他人とつながり続け、一挙手一投足をお互いに見せ合っているわけですから、否が応でも自分のキャラにも他人のキャラにも敏感にならざるをえないのです。

理想のキャラを演じたい

 また、SNSで自分自身のキャラを客観視する機会が増えたことで、#キャラの幽体離脱現象が起きていいます。その昔、芸能人運動会の徒競走で優勝した木村拓哉さんが、感極まって「だてにキムタクやってんじゃねーよ!」と叫んだことがありました。キムタク本人が、ファンが持つイメージとしての「理想のキムタク」を強く意識しているコメントです。

 Z世代の感覚は、この“役を演じる芸能人”のような感覚に似ています。SNSのコミュニケーションによって “本来の自分のキャラ”と“ありたい自分のキャラ”を分けて捉える感覚が身についているのです。

 これはこれで、なかなか大変なことでもあります。「理想の自分」と「現実の自分」のギャップを目の当たりにすることになるからです。「仕事ができるキャラ」を演じたいのに期待に応えられないと「イケてない素のキャラ」を痛感してしまいます。そんなストレスからメンタルを病んでしまう若手社員もいたりすます。

キャラの多面性

 また、Z世代は彼らなりのTPOに合わせて巧みに「キャラ」の設定を分けています。私たちオトナも家庭でのキャラと職場でのキャラは違ったりするものですが、彼らはもっとたくさんのキャラを持っていると思っていいでしょう。

 Z世代の若者数人に聞いてみると、「ツイッターのアカウントは3つ」「インスタグラムのアカウントは2つ」などというのが当たり前でした。例えばツイッターの場合、「リアルの友達用」「趣味のつながり用」「職場の人用」などと、目的によって複数のアカウントを使い分けています。そしてアカウントごとにキャラづけがあることも珍しくありません(#多キャラ者)。

 「職場の人用」では真面目キャラ、「リアルの友達用」ではお調子者、みたいな多面性があるのです。当然、職場におけるキャラクターは人それぞれですが、彼らのキャラは、私たちオトナが思う以上のギャップがあります。あるコミュニティではのび太くんなのに、別のコミュニティではジャイアンだったり、あるいは出木杉くんだったりするわけです。

 こうしてキャラは細分化しているのに、逆に見た目は均質化している。これもオトナにとっては、やりづらいポイントです。若手のどこに地雷が埋まっているのか、誰がやらかす問題児なのか、すごくわかりづらいのです。

 人を見た目で判断してはいけないとはいいますが、見た目はひとつの指標にはなります。暴走族、不良、ヤンキー、チーマー、コギャル、ヤマンバ……。昔は、際立ったファッションや髪型で個性を主張する若者がたくさんいました。しかし昨今は、社会や体制への反骨精神を示すのに、わざわざ髪を逆立てたり、制服を改造する必要はありません。SNSという自己表現装置で意思表示すればいいからです。おおっぴらにイキがってみせるなんてダサすぎ。これがZ世代の価値観です。

トリセツ…オトナの自己開示がZ世代のキャラをあぶりだす

 細分化したキャラを演じ分けるZ世代は、オトナにとってますます正体不明の存在になってきました。しかし彼らの素や本音を引き出さないことには、うまくコミュニケーションがとれるわけがありません。さてどうしたものか。

 この対策は実はシンプルです。まずオトナ世代から「自己開示」していくのです。自己開示とは、文字どおり自分に関するプライベートな情報を相手に話すこと。特に少し恥ずかしいと感じるくらいのことを正直に打ち明けると、「そんなことまで話してくれるなんて、自分に心を開いてくれているんだ」と相手は認識し、心の距離が縮まりやすくなります。

 そして相手から自己開示されると「こんなにさらけ出してくれたんだから、私も自分の話をしなきゃ」と、自己開示をお返ししたくなる心理が働きます。これを「自己開示の返報性」といいます。この心理的メカニズムがZ世代の心を開かせるチャンスなのです。

 簡潔にいうと、日々の職場でのコミュニケーションで「いや~困ったな~」などと、上司が自分の気持ちを素直に話すと、部下も「困った」「助けて」が言いやすくなるわけです。

 自己開示のポイントは、①仕事と無関係の話を仕掛ける②返答にプライベートな要素を混ぜる③ときには部下に弱みを見せるーの3つと言われています。もっと砕けた表現だと、「趣味」であるとか「笑える失敗談」とか「自信のないところ」とか。そういったちょっとした自己開示から始めていけばよいのです。

 職場という戦場で、日々「鎧」を着て戦ってきたビジネスパーソンには、そのちょっとした自己開示が意外と難しいのかもしれません。しかしZ世代が求めるのは上下の規律ではなく仲間としての関係です。むしろ彼らに「かわいい」と思ってもらえてナンボ。鎧、脱いじゃってください。


■平賀充記(ひらが・あつのり) 多様な働き方研究家。リクルートにて、FromA、タウンワーク、とらばーゆ、ガテン、はたらいくなど、主要求人メディア編集長を歴任、メディアプロデュース統括部門執行役員を経て「ツナグ働き方研究所」主宰。専門分野や若者マネジメントやリモートコミュニケーションなど。「東洋経済オンライン」「読売オンライン」など寄稿多数。近著に「神採用メソッド」(かんき出版)「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」(アスコム)がある。

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