【平賀充記の若者解体新書~キーワードで読み解くZ世代のトリセツ】⑦ヨコにヨコに伸びる成長志向

マウンティングに過敏すぎる

 「部長って、めちゃめちゃマウントしてくるよね」。Z世代の間ではこんな会話が平気で展開されます。格闘技の実況なんかよくで使われていた「マウントをとる」という言葉が、対人関係で相手より優位に立とうとする行為として一般的に流通するようになったいまでは、一見、普通に聞こえますよね。しかしよくよく考えてみると、そもそも部長は役職上の立場が上です。優位に立とうなどといった意識もないでしょう。#マウントもなにも…と、肩を落とす部長の姿が目に浮かびます。

 オトナ世代は、上から降りてきた話はとりあえず受け止めてきました。上司や先輩の指示に、多少の疑問や不満があっても「それが仕事」だと自分を納得させてきました。もちろんマウンティングされているという意識もありませんでした。

 しかしZ世代の若者たちは、上から目線に非常に敏感です。「自分のほうが上」とばかりに知識をひけらかしたり、一方的に話してきたりする人にアレルギー反応を示します(#上から目線アナフィラキシー)

フラットという名のタメ口

 「今の課長のアイデア、フツーによかったっす」。一方で、上長にこんな発言をする若手社員がいます。賛同してもらっていること自体はありがたいのですが、その言い方、なんかモヤモヤする~。そんな課長の心中が容易に想像できます。

 このように、目上の相手に向かって失礼じゃないか!と声を荒げるレベルでもないんだけど、微妙にタメ口っぽい物言いが職場で散見されます。

 先輩には絶対服従。そんなひと昔前の上下関係がパワハラの温床になっていた反動もあってか、職場で比較的フラットなコミュニケーションが増えていることも影響しているのでしょう。それにしても “マウンティングには過敏で自分たちはタメ口”って、オトナ世代からすると、職場の上下関係に対する感覚がかなりズレている感覚です(#フラットスギ)。

プロジェクトっていいよね

 本連載で繰り返し解説しているようにZ世代の生活基盤はボーダレスなオンライン空間にあります。そこには会社という“閉じられた垣根”や、役職という“タテの関係性”はありません。 “開放されたバーチャル空間”の中で、年上も年下もなく、経営者でも会社員でも、国籍が違っても、個と個でつながっていきます。彼らは、SNSで出会った仲間と“ヨコの関係性”を大事にしながら、生きているのです。

 だから若者からすれば、もはや職場や会社という枠組みは、それほど大きな意味を持ちません。同じように目上の先輩への過度な敬意も上司への服従も、必要性を感じません。組織ありきで働くのではなく、なんらかの目的があって集まった人たちでイノベーションを生んだり、ソリューションを開発していくという感覚です。ですから仕事の仕方も、上司や先輩の指示で盲目的に動く「上意下達型」ではなく、いろんな人と協力しながら進める「#プロジェクト型」を志向します。

成長に対する強迫観念

 これは彼らの生存戦略でもあります。右肩上がりの未来がイメージしにくい今、若者は自身のスキルアップによって未来を切り開くしかないと考えています。そういった意味では、彼らにとって「成長」は極めて重要なキーワードなのです。

 ひと昔前なら、リスペクトする上司が会社にいて、その上司に鍛えてもらうことで成長を実感できました。ところがいまや、オンラインで横に横につながっていくほうが成長できると感じる若者のほうがマジョリティでしょう。

 それまで接点のなかった人たちとツイッターでの交流を通じて仲良くなっていく。意識高い系のZ世代は、いろんな人とボーダレスに関わっていくことで、知恵や技術を出し合って刺激的なコラボレーションを実現しています。

 だから彼らは、様々な出会いを通じて“デキる人”と絡んでいくことに貪欲なのです。その絡みから、さらに様々なコミュニティや様々なグループに絡み、もっとデキる人に絡んでいきます(#絡ム―チョ現象)。こうした成長というキーワードに敏感なZ世代が、SNS上を駆使して#わらしべ長者的成長戦略を展開しているわけです。

トリセツ…部下ではなく仲間というスタンス

 だとすると、Z世代の若者にとって理想的な上司と部下の関係とはどういうものでしょうか。それはズバリ「仲間」です。人生の先輩と後輩でもなく、ましてや師匠と弟子ではなく、ひとつの仕事を協力して成し遂げる仲間であることを彼らは求めています。

 「なにを生意気な。まだ、たいした仕事もできないくせに」と憤るオトナもいるかもしれません。もちろん、彼らだって上司がやっている仕事を今の自分がこなせないことは理解しています。一方で、自分たち若者の働きもなければ仕事は成り立たないということもわかっています。

 だから、上司には、お互いに協力し合える仲間として接してほしいと願っているわけです。仲間なのですから、どちらかが威張るのはおかしいし、困っている相手を助けようとしないのもおかしい。ましてや、どうしていいかわからないでいる部下に対し、「自分で考えろ」とか「いちいち聞くな」などと言う上司は仲間として不適格。Z世代は躊躇なくそう判断します。


■平賀充記(ひらが・あつのり) 多様な働き方研究家。リクルートにて、FromA、タウンワーク、とらばーゆ、ガテン、はたらいくなど、主要求人メディア編集長を歴任、メディアプロデュース統括部門執行役員を経て「ツナグ働き方研究所」主宰。専門分野や若者マネジメントやリモートコミュニケーションなど。「東洋経済オンライン」「読売オンライン」など寄稿多数。近著に「神採用メソッド」(かんき出版)「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」(アスコム)がある。

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