【平賀充記の若者解体新書~キーワードで読み解くZ世代のトリセツ】⑤顔バレせずにささやかに目立ちたい

顔バレしないバイトが人気

 最近、若者の間で顔バレしないアルバイトが人気だとのことです。たしかに高校生の場合、学校の校則によってはアルバイトが禁止されている場合が少なくありません。学校にバレないでバイトしようとなると、接客などの仕事ではない=顔バレしないことが大前提になります。

 しかし、アルバイトが禁止されているわけではない大学生やフリーターにとっても、顔バレしないバイトが人気だというのです。飲食店で働くにしてもホールスタッフよりキッチン、もっというと倉庫や工場での作業の仕事の方が人気だとか。

 実はこの現象は、SNSが定着してきたことと大きく関係があります。例えば「A子ちゃん、あのお店でバイトしてたよ」という個人情報が、知り合いの投稿によって晒されやすくなってきているのです。

 オシャレなカフェなんかでバイトしてる場合は、第三者がイケてる感をアピールしてくれることになって、むしろありがたいというケースもあるでしょう。しかし「A子ちゃん、あのお店でバイトしてたよ」の後に「A子ちゃんにしては、ちょっと意外…」というようなバイト先であったら、どうでしょう。

 たかがアルバイトと思うかもしれませんが、SNSという相互監視のムラ社会に生きるA子ちゃんの思考回路では、自分のブランドがダダ下がりしたと感じてしまうのです。顔バレしないバイトを選ぶのは、Z世代の自己防衛本能が働いているから。そういっても過言ではありません。

身バレは、もはや生存リスク

 顔バレより危険なのが身バレかもしれません。ご存じのように、身バレとは晒していなかった身元や身分が明らかになってしまうこと。 主にネット上のブログやSNSなどで、本名を出していなかった状況にもかかわらず、書いてある情報などから身元が特定された時に使われます。

 近年、こうしたSNS上での身バレから個人情報が特定され、それが事件にまで発展したという事例も散見されるようになってきました。ツイッターやインスタグラムに投稿された写真に少しだけ写り込んだ背景から、居住地や現在地が絞り込まれたり、部屋の間取りから物件情報を探し出されたりする時代なのです。

 仮に、レストランや病院、商店街など、写り込んでいれば自宅の近くであることがわかるような場所に関する投稿に気をつけていたとしても、近所のマンホールにまで気を配る人は少ないでしょう。マンホールは市町村ごとにデザインが異なったり、固有番号や自治体名が記載されていることもあって、実は特定されやすい対象物。そんなところにも気を配らないといけないご時世だったりするのです。

 すっかり生活の一部となってきたSNSへの投稿は、ある意味で大きなリスクをともなうコミュニケーションになってきてしまいました。

投稿に煙幕を張る

 そうなると、そこまでリスクを負ってまで投稿しなきゃいいんじゃないか、とも思います。しかしながら、Z世代はソーシャルネイティブ。物心ついた時からSNSとともに育ってきています。SNSがない世の中を知りません。彼らにとっては#NO投稿NOライフなのです。結果として、彼らのSNS投稿は非常にビミョーな進化を遂げていくことになります。

 思い切って買ったブランドものの洋服があったとします。それを友達には見てほしい。しかし危険を察知しているZ世代は、服を着た自撮り写真をドーンとアップしたりはしません。

 例えば、みんなで撮ったパーティの写真に写り込ませるという非常に回りくどいアピールをしがちです。あるいは、その服をさりげなく着用しつつ、飼っているペットを抱いて、そのペットを前面に押し出して投稿して、コメントも「ウチのショコラかわいい♥」とかで、服に関して自分から説明しないというのが常套手段です。そこに「その服、新しく買ったの?かわいい!」などと友達からリプライが返ってこようものなら、小さくガッツポーズ。

 煙幕を張りながら、できるだけさり気なく自慢する。褒められいけど、アピールしすぎなのもカッコ悪い。知らない誰かからけなされるかもしれない。なにより危険だ。そんな状況下でZ世代が編み出した投稿の形態が、こうした#カモフラージュ癖なのです。

顔を消しても投稿したい

 そしてこうした煙幕系投稿は、より進化(?)を遂げています。最近のインスタグラムでは洋服を堂々と見せながら、自分の顔を隠すという投稿が流行っているのです。

 手で覆う、自分のケータイを顔に重ねる、画像にモザイクやマスキングをして隠すなど、様々ですが、とにかく顔バレを防いでいます。まさに#顔を隠して服隠さず。カモフラージュより、もはや開き直ったという感じもします。しかし、そんなどこの誰だか判別がつかない投稿で自意識を満足させられるのか。そんな素朴な疑問も芽生えますが、友達には分かるらしいのです。

 自分の知人・友人にだけ分かってもらえばいい。というか知人・友人にだけ伝えたい。しかし、世界とつながるバーチャル空間だから、見られなくてもいい人に見られてしまう。突き詰めれば、それがリスクだとZ世代は心得ています。だから、見せたい人にだけ見せたい情報を伝えるスキルを日々進化させているのです。

トリセツ…さり気ない発信に気づく観察眼

 いずれにせよZ世代は、身内で小さくていいから“バズりたい”(#プチバズる)願望は、しっかり持っています。しかし一歩間違うと友達にさえウケないし、場合によっては村八分になる可能性もある。だから過剰に忖度する(【平賀充記の若者解体新書】②過剰忖度世代)。それどころか最近では、身に危険が及ぶリスクさえあるから、発信にことさら気をつかう。そんな冷静と情熱の間で悶々とせざるをえない。これがソーシャルネイティブの置かれたリアルな環境です。

 ですから、彼らが職場で発する電波はかなり微弱です。オトナからすると「どんだけ分かりにくいんだ?」と思うでしょう。しかしその微弱な発信に気づけるかどうかが、コミュニケーションの肝でもあります。あなたの職場にも、気づいてもらうのを待っている若者が、きっといます。


■平賀充記(ひらが・あつのり) 多様な働き方研究家。リクルートにて、FromA、タウンワーク、とらばーゆ、ガテン、はたらいくなど、主要求人メディア編集長を歴任、メディアプロデュース統括部門執行役員を経て「ツナグ働き方研究所」主宰。専門分野や若者マネジメントやリモートコミュニケーションなど。「東洋経済オンライン」「読売オンライン」など寄稿多数。近著に「神採用メソッド」(かんき出版)「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」(アスコム)がある。

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