【平賀充記の若者解体新書~キーワードで読み解くZ世代のトリセツ】③意識高い系コンプレックス

「意識高いね」は褒め言葉ではない

 Z世代の間で「意識高い」というと、もはやちょっと相手を揶揄するニュアンスがあります。例えば、やたらと人とは違う自分を語ったり、オンラインサロンや自己啓発系の本の影響を受けていたり。そんな匂いを感じ取ると「意識高いね(笑)」と言いたくなってしまうのです。

 本来、高い意識を持つことは良いことのはずです。それが軽い悪口のようになってしまった。これはSNSによる自己表現の機能が人の自己顕示欲を刺激したことが一因です。つまり世の中に「意識高い系」のアウトプットがやたらと増えてしまい、そうした他者のアウトプットに疲弊してしまうという流れです。

 「SNS疲れ」「SNSうつ」といった言葉もあるように、こうした傾向は全世代共通のはず。なぜZ世代において、このメンタリティが顕著なのでしょうか。それは本連載でもすでに紹介した“Z世代の過剰忖度”が機能しているからです。(※参考⇒②過剰忖度世代)

 簡単にいうと、オトナより周囲の目を気にするため、必然的に他人と比べる傾向が強いのです。ポジティブな投稿と自分を比較して「自分はなんてダメなんだ…」とネガティブな気持ちになっていく。SNSの#隣の芝生が青すぎる問題です。自分の置かれた境遇や充実度、あるいは幸福度のようなものを、他人と比較してしまい、相対的に自分はつまらない人間だと思い込んでしまう。まさに人工衛星からの電波を捉えて相対的に自分の現在位置を把握するGPS機能のよう(#被害妄想GPS)でもあります。

 自分も「意識高くないといけない」という強迫観念、その裏返しからの反発。こうした複雑な心理がZ世代には強く渦巻いているのです。

早朝のスタバでドヤ顔

 朝6時にスタバにチェックインとか、最高にウザいんですけど…。こういう感覚が「意識高い系投稿」を揶揄するZ世代の代表的な声です。チェックインというのは位置情報を使ったSNSの機能で、要するに自分がどこにいるかをフォロワーに自動通知するものです。

 ですから、わざわざ本人が投稿しているわけではないのです。しかしこの自動投稿を受け取るほうは、「こんなに早くからシャレたカフェで仕事しちゃってますアピール」を感じるわけです。こうした投稿はけっこう多くて、ちまたでは#スタバでドヤといわれています。

 朝からスタバにチェックインする人物が本当に高い意識で努力しているのか、キャラとしてそんな自分を見せたいのかはわかりません。本物の「意識高い系」ではなく、意識高い系を装う「意識高いふう」なのかもしれません。

 インタビューで「ちょっとした隙間時間ができたらバイトを入れたい」と話した女子大生の動機も、お金ではなく、友達と比べて自分だけ暇なのが嫌というものでした。「人生充実してます」とアピールしなきゃ。無理矢理にでもリア充に見せなきゃ(#ムリヤリア充)。そんな強迫観念が彼女をアルバイトに駆り立てているのです。

Z世代のフェイスブック離れ

 特にフェイスブックは、スタバでドヤ的なポジティブ報告の宝庫です。匿名性がある程度守られ、”自分の思いやステキと思う事などをつぶやいて発散する場”としての「ツイッター」「インスタグラム」、”仲間や友だちとのコミュニケーションの場”としての「ライン」とは異なり、フェイスブックは基本的に実名を使用します。もちろん、誰だって退屈な時間くらいあるのですが、フェイスブックは実名であるがゆえに、そういう投稿はほぼされません。目の当たりにするのは、他人の楽しい瞬間、もしくは過剰に盛った話ばかり。

 悪目立ちしないよう適度に煙幕をはりながら投稿するスキルを身につけているZ世代からすると、こうした自己顕示ムンムンの投稿はだいだいオトナ世代のものだと看破しています。またフェイスブックは、そもそもオトナ世代の比率が高いSNSですから、必然的に“オトナの無防備な自己顕示欲”に触れる機会が多くなります。

 Z世代のフェイスブック離れが最近になってよく指摘されますよね。創設者のマーク・ザッカーバーグ氏が大学生の交流を目的として始まったフェイスブックから若者が離れていくというのは皮肉な話ではありますが。彼らは、こうしたオトナたちの分かりやすすぎる投稿に辟易しているのです。

トリセツ…微弱なSOSのサインを見逃すな

 「意味わかんない指示の連発」「つらいけどやらなきゃ終わんない。徹夜かも」。ツイッターなどで、特定の相手に送る「リプライ」ではなく、誰に向けてかわからないような投稿をあえてすることを「エアリプ」というそうです。

 こうした「エアリプ」、実は職場でも散見されます。独り言のように「あー、最悪」とか「もうヤバい、しんどい」などと口にする若手っていますよね。意識高くなきゃ。意識高く見せたい。でも分かりやすすぎるのはダサい。こうした複雑な深層心理の中で生きているZ世代のコミュニケーションは極めて繊細です。また直接的に弱音を吐くのも苦手です。ネガティブな状況でも“微弱なSOSを発する”にとどまることが少なくありません。

 見かねた同僚や上司が「大丈夫? どうしたの?」と声をかけても「なんでもないです。大丈夫です」と返ってきます。これ、ほぼ大丈夫ではありません。十中八九、誰かに自分の大変さに共感してもらいたい “かまってちょうだい心理”から漏れ出た発言です(#職場のカマチョさん)。私たちオトナが気をつけなければいけないのは、このSOSのサインを見逃さないこと。さらに一歩二歩踏み込んだフォローとケアを足してください。


■平賀充記(ひらが・あつのり) 多様な働き方研究家。リクルートにて、FromA、タウンワーク、とらばーゆ、ガテン、はたらいくなど、主要求人メディア編集長を歴任、メディアプロデュース統括部門執行役員を経て「ツナグ働き方研究所」主宰。専門分野や若者マネジメントやリモートコミュニケーションなど。「東洋経済オンライン」「読売オンライン」など寄稿多数。近著に「神採用メソッド」(かんき出版)「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」(アスコム)がある。

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