【自分と先祖様の防災サバイバル術】➀事前の備え

「薬」「おむつ」「とろみ剤」ー「平時」と「非常時」の垣根を下げる

「災害弱者」であることを自覚したら、若い人以上に「備え」をしておかねばならない。避難所の管理体制が整うまでは、高齢者に特化した支援は期待できないからだ。

 年齢を問わずに、普段から非常用のリュックに入れておきたいものがある。「ペットボトル入りの水」「火を使わずに食べられる食料品(チョコレートなど)」「洗面用具」「ティッシュ」「下着」「懐中電灯」「ラジオ」「古新聞」だ。避難に余裕があれば「現金」「通帳」「印鑑」「保険証(コピーでもOK)」なども持ち出したい。「2~3日間」をサバイバルできれば大丈夫。あとは、救援物資が届き始めるはずだ。

■薬、おむつ、トロミ剤

 ここではシニアならではの非常用品に焦点を定めて考えてみよう。

 まずは「薬」。血圧を調整する薬や、けいれんを止める薬など、数日間切れてしまうと体に悪い影響が出かねない。かかりつけ医や薬局も、被災の程度によっては休業期間が長引くかもしれない。普段から医者と相談して備蓄品を用意することは、災害の各種マニュアルのなかでは「基本」とまでうたわれている。「補聴器の電池」なども用意しておきたい。

 要介護状態だったり、排泄に困難を抱えたりしている人は「紙おむつ」を多めに用意しておくといい。避難所で初期段階からおむつが支給される可能性は低い。多くの人が駆けつける避難所では、トイレが不足しがち。普段は紙おむつを使わない人でも、使用してしまったほうが精神的に楽になる。

 食べ物を飲み込む力(嚥下力)が衰えている人は「とろみ剤」の用意も必要。初期段階の避難所で配られるのは「おにぎり」「パン」など水分が低めのものが多い。人によっては「入れ歯洗浄剤」の用意も。

 非常リュックは「身近に置いておく」ことが大切だ。東日本大震災の被災者証言録(岩手県釜石市による『証言記録集』の「根拠資料」から抜粋)には、「貴重品や非常用持ち出しリュックは2階の寝室にありました。しかし、高齢の私は大きな揺れで2階に上がることができませんでした」(70代女性)、「用意していなかったので、持ち物をそろえているうちに津波が来ました」(80代女性)といったものがいくつもある。

■フェーズフリー

 最近は発想を進化させて、「フェーズフリー」という観念も提唱されている。「『平時』と『非常時』という垣根を取り払い、普段利用している商品やサービスを災害時にも使えるようにしよう」という概念の言葉だ。

 たとえば、食の分野では2020年6月に『備えいらずの防災レシピ』という本が発行され、話題になった。「湯せんでできるご飯」「『トマト缶』を利用した煮込み」「味付け不要、加熱も不要、さば缶と切り干し大根の煮物風」…といったレシピが並ぶ。

 発行したのは「東京法令出版」。法規書を扱う〝硬派〟の出版社。消防士など防災関係者が読む『月刊消防』(同社刊)に掲載したレシピが評判を呼んだことがきっかけで出版された。担当の徳竹裕志さんは「防災という観念が、日常の食事にまで広がればうれしい。子供から高齢者まで利用できるレシピ掲載を意識しました」と話している。

■行政も支援、家具固定

 事前の備えとして、「家具の固定」も徹底しておきたい。

 死者行方不明者6437人を出した阪神・淡路大震災では、震災当日に亡くなった約5000人のうちの7~8割が、倒壊した建物や家具の下敷きとなり「圧死」している。

 固定方法は、「L字型金具」などが「柱」に直接接触する形で固定するのが原則。それが難しければ、「つっかえ棒」「ベルト式固定器具」などを使う。

 テレビ、洗濯機、冷蔵庫も固定しておきたい。床との接地面に緩衝材を入れる方法もある。

 とは言っても、シニアにとっては家具の固定もひと苦労という人も多いはず。固定のために、無理な姿勢をとったり椅子の上などに乗ったりするのは厳禁。ケガをしてしまったのでは本末転倒だ。

 多くの自治体では高齢者向けに、家具固定のための相談窓口を設けている。相談すると地元の建築業者などに連絡をとってくれる。作業が簡単なものであれば無償で、複雑であっても補助金を活用することで安価に抑えることができるので、相談してみて損はない。

(次回は②災害発生・避難につづく)

※『終活読本ソナエ』2021年新春号より

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