【坂口孝則の目からウロコの経済学】コストコはなぜ強いのか

コロナ禍でも世界的に成長 

 世界的にコロナ禍後の復活に向けて足踏み状態のなか、優良企業の選別がはじまったようだ。そのなかでも注目に値するのがコストコだ。リアル店舗の撤退が相次ぐなか、コストコの株価が上昇している。

 この1年間で307ドルだった株価は、450ドル以上に上昇している(https://investor.costco.com/)。2021年上期の収益は880億ドルだった。これは2020年と比較すれば15%ほどの伸びだ。同期間の営業利益相当額も27億ドルと、19%も伸びている。直近の業績を見ても好調は明らかで、2021年7月の売上高は昨年同期比で約14%も伸びている。

 日本での展開を見ても、今年の4月に北海道2店目となる店舗をオープンさせた。その後、立て続けに熊本と名古屋にもオープン。さらに、2022年中には栃木に初出店する。北関東では茨城、群馬に続く出店となる。好調のため、規模の拡大が続いており、現在は川崎にある本社を千葉県木更津市に移転し、さらに攻勢を狙う。

強さのカラクリ①会員費

 先ほど、2021年上期の収益は880億ドル、営業利益相当額も27億ドルと述べた。ここで注目したいのは収益の内訳だ。というのも、コストコは880億ドルのうち商品の売上高が862億ドルで、会員費収入が17億ドルある(四捨五入の関係で合計が880億ドルにならない)。この会員費収入が重要なのだ。

 そこで、コストコの商品売上から営業利益にいたる計算を見てみよう。

 ここから分かるのが商品仕入れなどの異常なほど高い原価率だ。実に90%に上る。このままだと利益は出ないものの、会員費がここで効いてくる。日本での会員費は次の通りだ。

  • 個人会員 ゴールドスター      → 4,840円/年
  • エグゼクティブ・ゴールドスター → 9,900円/年
  • 法人会員 ビジネス                → 4,235円/年
  • エグゼクティブ・ビジネス    → 9,900円/年

 この会員費があるからこそ、原価ギリギリで商品を提供できる。ガソリンなどを含むNB(ナショナルブランド=どこでも購入できる商品)も他店舗より優位な価格で販売可能だ。また、会員制度を活用し、顧客ロイヤリティを向上させている。顧客の声を集めることによってPB(プライベートブランド)で質の良いオリジナル商品を提供できるようになる。“サブスクリプションに見えない”サブスクリプションモデルと言ってもいいかもしれない。

強さのカラクリ②盗難率の低さ

 また、コストコは盗難率が低く、年間売上高の約0.12%に過ぎないといわれる(https://www.barrons.com/articles/costco-has-been-on-a-tear-a-low-rate-of-theft-is-one-reason-51613160503)。同業のスーパーマーケットはほぼ数字を公表していない。ただし、いくつかのデータを確認する限り、0.5%~1%くらいだ。これは日本も同水準にある。

 コストコの盗難を防ぐ施策はいくつかある。

  • 会員制度であること
  • 顧客ロイヤリティが高いこと
  • スポット客も既存会員の知り合いであること
  • 商品が大きいために、盗難が難しいものが多いこと
  • 出口で店員からレシートを確認されるため抑止になる

 考えてみれば小売店の売上高に対する利益は数%しか出ないのが通常だ。利益がたった数%なのに、 0.5%~1% も盗難されてしまうのは相当なダメージであることが分かる。

 なお、コストコの宣伝広告を見る機会はない。同社は宣伝広告費ではなく、あくまで顧客に良質なサービスを提供することによるリピートや口コミでの集客に努めている。会員制度についても、約9割が継続更新するというものすごい結果となって表れている。

強さのカラクリ③マグネット商品

 来店頻度を高めるために、コストコではフードコートを併設している。ソフトドリンク60円、コーヒー100円。個人的にはピザ300円がありがたい。ただ、やはり有名なのはホットドッグで、日本ではドリンクとともに180円、米国では1.5ドルで販売されている。コストコの創業者はこの1.5ドルの低価格こそ、来店頻度を高める「キモ」と考えていたようだ。

 マグネット商品とは、文字通り人々を磁石のように惹きつける商品のこと。安価で良質な商品は当然として、ホットドッグがマグネット商品となっている。IKEAもフードコートを活用しているのは知られているが、私や私の妻のように、「ランチのためにIKEA、ランチにコストコに行ってみようか」と活用する人たちは多いだろう。もちろん、頻度が高まれば、ついでに買い物も増える。

 前述の通り、コストコではガソリンを安価に購入できるし、雑誌の割引サービスもある。これは、商品の原価はギリギリでも良いため、会員になってくれる数で利益を稼ぐモデルゆえの強みと考えていいだろう。

強さのカラクリ④従業員労働生産性の高さ

 これはどちらがニワトリでタマゴかは微妙であるものの、コストコの従業員は生産性が高いと知られている。

 コストコの従業員は同業者の平均3倍の収益をあげている。また、その結果として、小売業者の平均時給は10ドル強にたいして、コストコは17.6ドルになっている。もちろん地域などによって異なるが、総じて高い。なお、日本と同様に米国でも労働者の確保が難しくなっており、各社とも臨時ボーナスを支給している。米国のコストコでは、さらに従業員の時給を引き上げることを検討している。

 同社は従業員満足度を高める経営を実践する企業として有名だ。また、バイヤーが取引先と相当な時間をかけて新商品を開発することも知られている。まったく凡庸な結論ではあるものの、一人ひとりの努力が企業経営に好影響を与えていると考えればいいだろう。

 ここまでコストコの好調な理由を考えてきた。しかし、繰り返すと、理屈うんぬんの以前の話として、商品の良さがあるのは間違いない。コストコではPB「カークランドシグネチャー」が有名だが、私は今日もまとめ買いしたカークランドのワインで酔いたいと思う。


■坂口孝則(さかぐち・たかのり) 経営コンサルタント。大学卒業後、メーカーの調達部門に配属される。調達・購買、原価企画を担当。バイヤーとして担当したのは200社以上。コスト削減、原価、仕入れ等の専門家としてテレビ、ラジオ等でも活躍。企業での講演も行う。著書に『調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買実践塾』『だったら、世界一の購買部をつくってみろ!』『The調達・仕入れの基本帳77』(ともに日刊工業新聞社刊)『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』(ともに幻冬舎刊)など35冊を超える。

★【坂口孝則の目からウロコの経済学】前回の記事はこちら★

ドン・キホーテの次なる挑戦

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