【奥村奈津美のミライ防災+】サステナブル防災のススメ③コンポスト

 生ごみゼロ生活を始めて一年ちょっと。使用しているコンポスト(生ごみから作る堆肥)の会社「LFCコンポスト」から手紙が届きました。

 「生ごみをリサイクルした量が100kgに近づきます。生ごみの水分は90パーセントですから、焼却場での負担を大きく減らすことができています。具体的には少なく見積もっても二酸化炭素(CO2)を48kgも減らしています」
 
 毎日出る野菜の皮などの生ごみを、燃えるごみに出すのではなく、コンポストに入れる。習慣になれば無意識にできることでしたが、継続できたことに嬉しさを感じる手紙でした。

 私たちは、国民一人当たり、毎日、お茶碗一杯分の食料を捨てています。食べ残しや売れ残り、期限が近いなど、理由はさまざまですが、食べているお米の量とほぼ同じ量を捨てているとは衝撃的な数字です。日本のゴミ処理費は年間およそ2兆円(環境省)で、その半分の8000億円から1兆円が食べ物ごみの処理費という推計があります。

 産業廃棄物として捨てられる食品ごみは法律でリサイクルすることが義務付けられていることもあり、8割は家畜の飼料などになっていますが、一方で、外食産業や一般家庭から出る食品ごみは、ほとんどリサイクルされず、焼却処分されているということです。生ごみは水分が多いので、ごみとして燃やすと焼却場の負担になり、当然、たくさんの二酸化炭素が排出されることになります。

 その生ごみを、ごみではなく資源として堆肥化する未利用資源の有効活用が注目されています。6年連続でごみの排出量が最も少ない長野県では、食べ残しを減らす県民運動とともに、ダンボールコンポストの作り方を紹介したり、「生ごみ自家処理講座」なるものが定期的に開催されています。その他の自治体でも、さまざまな取り組みが行われ、各家庭でコンポストを購入する費用の助成を行なっているところもあります。

 私も以前からコンポストを作りたいと思っていましたが、庭がないと難しいもの、電気を使うものが多く、「これ!」というコンポストに出会えず、踏み出せずにいました。そんな中、昨年1月にマンションのベランダでもできるという「LFCコンポスト」が発売されました。マンション暮らしの私でもできるのではと、生ごみゼロ生活をスタートしたのです。

 「LFCコンポスト」は持ち運べるバッグタイプ。ペットボトルのリサイクル素材でできたオシャレなバッグの中に、籾殻を炭にしたものなど自然素材でできた基材と呼ばれる土が入っています。この中に、野菜の皮や魚の骨、食べ残しなどを入れていくだけ。生ごみというと、保管していると臭いが気になったり、虫が来たり、ストレスに感じる存在かもしれませんが、
コンポストを生活に取り入れると、生ごみがごみではなくなる、という不思議な感覚がありました。

 そして、2ヶ月ほど生ごみを入れ続けたら、3週間ほど熟成させるだけで堆肥が完成!その堆肥を使って、ベランダ菜園で野菜を育て、収穫。2歳の息子と、都会にいながら食循環を体験しています。「コンポストさん混ぜ混ぜしたい」「トマトさんにお水あげる、早く大きくなあれ」と、子どもも積極的に楽しんでくれています。


 LFCコンポストを開発した「ローカルフードサイクリング」のたいら由以子社長によると、この1年半で利用者は2万人に増え、これまでコンポストを使うことのなかった、特に都市部の人たちが始めているそうです。冒頭ご紹介した手紙にもありましたが、1年間で一家族あたり、生ごみをリサイクルした量が合計100kg、少なく見積もっても二酸化炭素を48kgも減らしているとのことです。

 これに、コンポストに取り組んでいる家族の数を乗じるということですから、非常に大きな数字になってきます。さらに、出来上がった堆肥で野菜やお花を育てると、二酸化炭素の吸収体を増やしていることになり、着実に環境に貢献しているということです。

 たいら社長たちは、これまで20年間、さまざまな堆肥作りや堆肥活用法の実証実験を繰り返してきています。その一つが、福岡市の美和台地区。地域の高齢者世帯にコンポストを設置し、週に一度、コンポストの手入れをしながら見回り活動を行なっているそうです。そこでの日常会話から、体調の変化や困りごとなどを聞いたり、手入れができない畑の活用などさまざまな広がりが生まれているということです。また、天神地区では、地域の企業や飲食店などでコンポストを使い、そこでできた堆肥を集めて、屋上菜園で野菜を育てる取り組みをしているそうです。

 コンポストを通しての地域コミュニティ作り。地域のつながりは防災活動にも欠かせないので、「コンポストと防災って相性がいいですよね」とたいら社長も話しています。

LFCコンポストを開発した、たいら由以子社長㊨と筆者

 一方、都市部では、できた堆肥を使う場所がないという人も多くいますが、「LFCコンポスト」では、堆肥を回収して、農家さんに送り、野菜を育ててもらう取り組みもしています。

 先日、新宿で行われたルミネアグリマルシェでは、雑誌「オレンジページ」とのコラボ企画でブースが出店され、堆肥の回収が行われました。完成した堆肥を手に、次々とコンポスト利用者が訪れていました。この日、回収した堆肥は、東京・立川の農家さんに送り、野菜作りに生かされるということです。

 地域に食の生産現場があるということは、災害にも強い地域づくりにつながります。大きな災害が起きると物流がストップし、食料もなかなか運ばれて来ません。特に野菜などの生鮮食品は手に入らなくなります。東日本大震災でも「家庭菜園をしているご近所さんから野菜をもらった」「内陸部の農家さんから野菜を送ってもらった」など、被災された方の話を伺いました。地域の農家さんと繋がり、応援することも防災につながるのです。

 さらに、災害時はごみの回収もストップします。普段からコンポストを利用していれば、たとえ生ゴミを家で保管しなくはならない状況になっても、普段通り。困ることもありません。コンポストは立派な防災グッズの一つでもあります。


 地球に優しい暮らしをすることが最強の防災「サステナブル防災」。地球温暖化対策にもつながるコンポストで生ごみゼロ生活、始めてませんか?


《動画》奥村奈津美のオンライン防災講座「コンポスト×防災の可能性」


■奥村奈津美(おくむら・なつみ)
防災アナウンサー×環境省アンバサダー。1982年、東京生まれ。広島、仙台で地方局アナウンサーとして活動。その後、東京に戻りフリアナウンサーに。TBS『はなまるマーケット』で「はなまるアナ」(リポーター)を務めるほか、NHK『ニュースウオッチ9』や『NHKジャーナル』など報道番組に長年担当。東日本大震災を仙台のアナウンサーとして経験。以来10年間、全国の被災地を訪れ、取材や支援ボランティアに力を入れる。防災士、福祉防災認定コーチ、防災教育推進協会講師として防災啓発活動に携わるとともに、環境省 森里川海プロジェクトアンバサダーとして「防災×気候変動」をテーマに取材、発信中。2歳児の母。著書「子どもの命と未来を守る!防災「新」常識~パパ、ママができる‼︎水害、地震への備え~」(辰巳出版)。毎週オンラインで防災講座を開催中!

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