【奥村奈津美のミライ防災+】サステナブル防災のススメ①雨水

地球にやさしい暮らしは、究極の防災!

 天からの恵「雨」を自宅で溜め、日々の生活で使える仕組みがあると、災害で断水しても「非常用水」として役立ち、さらには「水害の抑止」にもつながる。福岡大学工学部の渡辺亮一教授が、そのことを自宅で実証しています。

 渡辺教授は、2012年から、世界最大級の雨水タンクを設置した雨水利用実験住宅、通称「雨の家」に住んでいます。仕組みは、屋根に降った雨を全て地下の雨水タンクに溜め、生活用水として使い、使いきれなかった水は、駐車場の下に埋めたタンクに移し、そこから地中に浸透させるというもの。最大42トン、4人家族で2ヶ月間使うことができる量の水を溜めることができるという設備です。


 雨水というと、汚いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実は無色透明の水資源。渡辺教授の「雨の家」では、初期雨水カット、茶漉しのようなフィルターで雨水を濾し、その後、タンク内で黄砂やPM2.5などの不純物を沈殿させるようにすることで、この9年間、水道水の基準をほぼ全ての水質項目で満たしており、発がん性物質や大腸菌も出ていないということです。つまり、もしもの時は飲料水として利用できるほどのレベルにあることが分かったそうです。また、毎日、500リットルの雨水をトイレ、洗濯、お風呂で使い続けることができること。さらには、屋根に降った雨のほとんどを下水道に流出させることなく、利用・浸透させることができることを証明しています。


 近年、毎年のように起きている水害。特に、都市部では、コンクリートやアスファルトで覆われ、雨が染み込みにくくなっていること、さらに地球温暖化の影響もあり、豪雨が増えていることなどが要因として挙げられています。自然の環境では、雨水は地面に吸い込まれたり地表面を流れたりしながら、ゆっくりと川にたどりつきます。

 昔は、地域に田畑や森林があり、流域全体で保水、遊水してきたのですが、開発が進むにつれて、都市部では、地面がアスファルトやコンクリートで人工的に舗装されているので、雨水の多くが地面に吸い込まれず、下水管や水路を経由して一気に河川に放流されるようになりました。この排水機能、都市部では、1時間に50ミリ程度の雨を基準に設計をしていますが、ゲリラ豪雨など、それを上回るような豪雨の頻度が増えています。(気象庁)そのため、一時的な豪雨によって都市の排水機能を上回り、排水溝や水路、そして、マンホールなどから水があふれて浸水することが増えているのです。


 今後、地球温暖化が進むことで、より豪雨の回数は増え、水害の被害も増えることが想定されています。そうした中で注目されているのが、「流域治水」という考え方。流域の住民みんなで水害対策に取り組む方法です。国土交通省も「流域治水プロジェクト」として、ハード・ソフト一体となった事前防災対策を公表しています。

タンク設置を助成する自治体も

 その一つに、各家庭で雨をため、ゆっくり地中に浸透させることで、下水道、川へ流れるのを遅らせる方法があります。福岡大学の渡辺教授の「雨の家」のような仕組みを各家庭で取り入れることができれば、水害の抑止に繋がるのです。なかなか家の下に大きなタンクを埋め込むのはハードルが高いですが、今、多くの自治体では雨水タンクの設置費用の一部を助成する制度を設けています。

 雨水タンクは、雨樋から取水してタンクに溜めて利用するもので、インターネットでも購入でき、簡単に設置できます。様々なタイプが出ていますが、雨水貯留浸透技術協会によると、容器を選ぶ時のポイントは、遮光性、耐久性が高く、蓋ができるもの。ゴミが入らないように初期雨水をカットできる仕組みを取り入れることや、直射日光が避けられ、利用する場所に近いところに設置するのが良いそうです。賃貸住宅の場合、雨樋からのタンクの設置が難しいこともありますが、最近は、ネットで集めるタイプもあり、これは日除けにもなります。


 普段、雨水を使って、庭の草木の水やり、洗車、玄関周りの掃除、トイレの流し水、また、これからの季節、雨水を使って打ち水をすることで、夏場の温度上昇を抑えることもできます。さらには災害時の非常用水、防火用水などなど利用用途は様々です。


 節水することは、温暖化対策にも繋がります。水道水は、ダムから浄水場、そして各家庭に運ぶときに、ポンプを動かすために電気を使うので、二酸化炭素を発生させています。カーボンニュートラルの視点からも雨水の活用が大切なのです。


 「流せば洪水、溜めれば資源」。公共施設や大型のビルなどは雨水利用が進んでいますが、一般住宅でも利用が進むことで、より流域治水を進めることができます。雨水を排水しない街づくりは、環境にやさしく、災害にも強い街づくりなのです。コロナの感染拡大を抑えるためにも、今年の大型連休はステイホーム。自宅でよりサステナブルな生活を取り組むために「雨水」の利用について考えてみてもいいかもしれません。

■奥村奈津美(おくむら・なつみ)
防災アナウンサー×環境省アンバサダー。1982年、東京生まれ。広島、仙台で地方局アナウンサーとして活動。その後、東京に戻りフリアナウンサーに。TBS『はなまるマーケット』で「はなまるアナ」(リポーター)を務めるほか、NHK『ニュースウオッチ9』や『NHKジャーナル』など報道番組に長年担当。東日本大震災を仙台のアナウンサーとして経験。以来10年間、全国の被災地を訪れ、取材や支援ボランティアに力を入れる。防災士、福祉防災認定コーチ、防災教育推進協会講師として防災啓発活動に携わるとともに、環境省 森里川海プロジェクトアンバサダーとして「防災×気候変動」をテーマに取材、発信中。2歳児の母。著書「子どもの命と未来を守る!防災「新」常識~パパ、ママができる‼︎水害、地震への備え~」(辰巳出版)。毎週オンラインで防災講座を開催中!

2021年4月3日に開催した「雨水×防災 サステナブル防災のはじめ方」は、公式Youtube「ミライ防災+」より福岡大学の渡辺教授、そして、雨水貯留浸透技術協会の大西さんによるプレゼンの全編をご覧頂けます。

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