【自分と先祖様の防災サバイバル術】シニアと防災②

東日本大震災から3月11日で10年を迎える。死者1万5899人、行方不明2527人。その多くが災害弱者であるシニア層だった。シニアのための「防災サバイバル術」を考えてみよう。

子供と同居…死亡率高い

親子で波にのまれ

 災害に襲われたときに、誰しもがさまざまな困難と向き合うことになる。そのなかでも、高齢者が置かれる立場は過酷だ。

 たとえば、「避難した」「しない」の判断ひとつとっても、高齢者特有の事情が生死を分けることになる。

 東京大学大学院の研究チームが、震災後に岩手県大槌町赤浜地区で高齢者の避難状況をつぶさに聞き取ったものをまとめた論文が日本建築学会で発表されている(※)。

 そこに70歳以上の「生死」と「住まい状況」をまとめた興味深いデータがある。「ひとり暮らし世帯」「夫婦世帯」「ひとり親と子供夫婦世帯」で、高齢者の生存率を比較したデータだ。

 最も生存率が高かったのは、「ひとり暮らし世帯」。27人が生存し、亡くなったのは2人だった。論文では「決して多くが安全に避難できたわけではないが、自らの力や親戚の助け、住んでいた場所の立地により、かろうじて生き延びることができたといえる」と分析している。

 つまり、ひとり暮らしの高齢者には、そもそもひとりで暮らせるだけの体力や判断力があることに加え、いざというときに「あそこの家は大丈夫か?」という周囲の助けが機能するようだ。

 体力、判断力があったとしても、若い人と比べ行動が遅いためか、「津波につかった人」の割合は高かったという結果もでている。1995年の阪神・淡路大震災のときには、火災による死者が、70歳以上で断トツに多かった。やはり年齢による体力差が、生死を分けた。

 大槌町での調査で生存率が最も低かったのは「ひとり親と子供夫婦世帯」だった。6人が死亡し、生存は2人だけ。亡くなった6人のうち、3人は子供と一緒に亡くなっていた。そのうち2人は寝たきりだった。避難しようにもできずに、最後まで付き添った子供とともに波にのまれてしまった。

 また、同じ調査結果からは、「避難する」「しない」の判断をするときに、若い世代は地震が大きかったことを根拠に避難を始めているのに対して、70歳以上の高齢者層では「周囲の人から促された」ために避難を始めた人が多くいることもわかった。

 70代の女性は調査に対して、「叔母の家にお茶を飲みにいっていた時に地震が来たが、津波は来ないと思って自宅に戻った。その後、叔母の孫が車で呼びに来て、乗るか乗らないかというところで津波に流された」と回答。ほかにも、「まさか津波が来るとは思わなかった」「逃げようと思い、財布とタンスのなかの通帳を持って外に出た」(80代女性)といった人もいた。調査チームでは、高齢者に「誤った被害想定」が多くみられたことを指摘している。

高齢者の犠牲相次ぐ平成

2019年10月の東日本台風。埼玉県川越市では特養ホームが浸水、孤立。入居者はボートなどで救出された

 日本列島は平成になってから、大規模な自然災害に相次いで見舞われている。

 この数年は地震以外にも、集中豪雨や大型台風による水害、火山の噴火、豪雪によって100人単位の犠牲者が毎年のように出ている。

 そして犠牲者の多くが60歳、あるいは65歳を超えた高齢者層だ。高齢化が進んでいるため、日本の人口に占める60歳以上の割合は34%(2020年)となっている。だが、災害犠牲者に占める60歳以上の割合は6割台となっている。2016年の「熊本地震」では78%、20年7月の豪雨では83%の犠牲者が60歳以上だった。

 どのようにして被災を免れるかは高齢者にとって大問題なのだ。

取り巻く厳しい環境

 高齢者が災害発生の瞬間をサバイバルして、避難ができたとしても、そこには高齢者ゆえのハンディキャップと不安が待ち構えている。

 震災後に問題点として浮かび上がった、主な要素だけを並べるだけでもこんなにある。

 「災害によって、通院、薬の処方などがストップしてしまうことへの対応が必要」

 「暑さ、寒さなど避難所の環境によって、体調変化を受けやすい」

 「生活環境が変わること」

 「避難所では高齢者に配慮した食事が出ない」

 「避難生活によって、周囲の人間の顔ぶれが変わることでの心理的負担」

 「デイケアなどが受けられなくなる」

 「被災した家の片付けには、周囲、ボランティアの助けが必要になる」

 「避難所、仮設住宅がバリアフリー対応していない」

 震災の経験を活かそうと、国や自治体では被災時のために「高齢者への配慮点」をまとめたマニュアルなどを整備している。しかし、子供、障害者、妊婦など、いざというときに配慮を必要とする人は多い。また、非常時に「すべての人が快適に感じる生活」というのもあり得ないのが現実だ。

※日本建築学会計画系論文集701号「東日本大震災時における高齢者の緊急避難行動の実態と集落環境による影響」神原康介氏らによる論文

(シニアと防災 あの日の現場③につづく)

※『終活読本ソナエ』2021年新春号より

関連記事

  1. 【自分と先祖様の防災サバイバル術】➀事前の備え

  2. 【地方移住ナビ】広島県竹原市 自然とコンパクトな街魅力

  3. 【データ×未来】(中)個人情報は誰のものなのか

  4. 愛犬が急病…ペット保険に入っておけばよかった

  5. 【馬渕磨理子の新富国論】ワクチン相場の歩き方~これから上がる最強の日本株

  6. 【覆面トレーダーK 億り人への道】選挙は株高 勝率9割

  7. 【データ×未来㊤】現実を超える仮想空間の「分身」 自分に代わり仕事、未来も予測

  8. 【マンション業界の秘密】10坪前後で駅から10分離れると資産評価ゼロ…「負」動産!?

  9. 【家電の世界】移動先での空気質を高める シャープのプラズマクラスターイオン発生機「IG-NM1S」

人気記事

logo logo

連載

PAGE TOP