愛犬が急病…ペット保険に入っておけばよかった

検査だけで10万円、入院費70万円

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ペットを飼う人が増えているという。オンラインを使ったテレワークの普及や、長時間労働の是正が進んだために在宅時間が長くなり、ペットを世話するための時間の余裕が出てきたためだ。それに合わせて、ペット保険の加入者も伸びているが、加入率は10%程度にとどまる。ペットが獣医の世話になってはじめて、「入っておけばよかった」と悔やむ声は少なくない。

 東京都八王子市に住む40代の山口令子さん(仮名)は、2020年末に、10歳の愛犬「ラルフ」をガンで失くした。ラルフの犬種はシェルティで、平均寿命は12、13歳とされているが、その前には体調に不安もなく、元気だった。ところが、突然、呼吸がおかしくなり、動物病院でガンと診断され、1カ月もたたないうちに亡くなってしまったという。

 「ペットフードを食べない日が続いたので一瞬心配したが、柔らかめのペットフードに変えてみると食欲が戻った」と令子さんは振り返る。ところが、安心した矢先に事態は急変する。しばらくすると、大好きな散歩でも歩かなくなり、呼吸をするのも辛そうになった。慌てて近所の動物病院に連れて行き、レントゲンと血液検査をした。費用は約1万5000円だった。

 その時、獣医師には「設備の整った病院で詳しい検査をしないと、はっきりした原因はわからない」と言われた。そこで、紹介状を書いてもらい、動物の高度医療を扱う病院で検査をしてもらうことにした。レントゲンでは撮影できない軟骨や靭帯、骨内の水腫、血腫をみることができるMRI検査を実施、肺に溜まった水を抜く処置をしてもらうと、呼吸が少し楽になった感じだった。初日の検査と処置の費用を合計すると、およそ8万円かかった。最初のレントゲン費用と合わせるとすでに10万円に届きそうだった。

 検査結果により、「悪性腫瘍(ガン)」と診断された。獣医師が言うには「ガンにも種類があり、抗がん剤治療を行うには、ガンの種類を突き止めなければならない」。そのためには、組織を採取して、検査会社に送り、検査結果が出るまで1週間ほど待つ必要がある。

 いったん家に連れ帰り、検査結果を待つか、入院させるかの選択を迫られた。入院費用は1泊約3万円。高額だが、入院中は点滴や投薬治療を受けられるほか、24時間の完全看護なので、愛犬の体調が急変した場合を考えると入院させた方が安心だ。

 獣医師からは「途中、容態が急変して人工呼吸器を使った場合は1泊15万円に跳ね上がる」と説明された。令子さんは「天井知らずの医療費に恐ろしくなりましたが、愛犬のためには入院させる方がいいと判断した」と話す。

その後、がんの検査の結果が出て、退院して、自宅での抗がん剤治療に切り替えた。残念ながらその2日後に亡くなった。

山口さんの愛犬「ラルフ」。ガンのため10歳で亡くなった

今回の愛犬の治療費は合計70万円ほどかかった。もしも70%補償される保険に加入していたら、50万円ほどカバーできた計算になる。もし、退院後に抗がん剤治療が長くかかった場合は、治療費が100万円を超える可能性もあったという。

令子さんは言う。「ペット保険には入っていても、ラルフの運命は同じだったかもしれない。でも、治療中に、愛犬の容態を心配しながら、費用のことも気にしなければいけないのがとてもきつかった」。

ペット保険加入率はわずか10%

日本のペット保険市場は年々拡大傾向にあるが、加入率はまだ低い。国内の犬猫の飼育数に対して、ペット保険の加入率は10%程度と推計されている。しかし、「ラルフ」のケースのように、何かあってからでは遅いので、ペット保険について調べておく必要がありそうだ。

ペット保険は人間の医療保険とは異なり、損害保険である点を理解しておく必要がある。契約は1年ごとで、毎年の更新時に、ペットの年齢が上がるのに応じて保険料も上がる。商品によって、ペットの加入年齢制限があるのが基本だ。補償割合については5割と7割を選ぶパターンが多い。補償割合が高くなると保険料も上がる。

犬種や猫種、加入時の年齢によっても保険料は異なる。加入を検討しているなら、各社のサイトで自分が飼っているペットの保険料を調べるといい。免責金額についても注意する必要があり、通院1日または入院1日あたりにかかった金額がある金額以下の場合に補償対象外となる。ワクチンや避妊・去勢手術などについては補償対象外となる商品もある。

保険金の請求方法についても、事前に理解しておくことが必要だ。保険会社が発行するペットの「保険証」を提示すれば、病院窓口での請求が補償額を差し引いた額のみとなる「窓口清算」が可能な会社もある。「窓口清算」に対応しているのは保険会社と提携している病院に限っているのが基本だ。

窓口での精算ができない場合は、いったん医療費の全額を窓口で支払い、後で保険会社に郵送などで請求書を送る必要がある。医療費が少額の場合は、手続きを忘れてしまうケースもある。一方、医療費が高額の場合は、動物病院での医療費の支払いが銀行振り込みなどには応じない場合がほとんどなので、支払い方法や医療費の額を事前に聞いておく必要がありそうだ。

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