【データ×未来】(下)データが導く新しい「明日」 情報を銀行に預ける選択肢

 年齢は36~44歳、既婚で趣味は野球とアウトドア…。「グーグル広告設定」というサイトを見ると、検索履歴などから推定された“自分”を見ることができる。「子供がいない」といった事実誤認もあるが、8割くらいは当たっている。この情報をもとに、広告を表示するのがターゲティング広告という手法だ。巨額の利益を上げるグーグルの富の源泉でもある。

 検索や地図案内など、無料で提供されるグーグルの便利なサービスに多くの人が飛びついた。しかし、グーグルが莫大(ばくだい)な利益を上げるようになると、人々はサービスの対価として、自分の個人情報を提供していた事実に気付き始める。デジタル社会では、データは価値そのもの。無料だと思っていたサービスも実は“無料”ではなかった。

 デジタル社会の進展で個人データの価値は増している。そして、一部の巨大IT企業や国家が、データを独占しようとしている現実がある。世界中で警戒感が高まる中、日本では「情報銀行」という新たな取り組みが注目を集めている。

 情報銀行は個人データを一括して預かり、個人の指示で第三者に提供するサービスだ。個人がデータの使い道を決められるため、プライバシー問題の解決策としても有力視される。日本IT団体連盟情報銀行推進委員長の井上貴雄は「個人のデータは個人が管理すべきで、情報銀行はその手助けをするものだ」と語る。

 すでに実用化されているサービスもある。電通グループが提供し、20万人が利用する情報銀行サービス「MEY(ミー)」だ。会員登録すると「新型コロナウイルスで買い物傾向の変化は?」など、企業からデータ提供のリクエストが個人に届く。提供に応じるとその対価としてポイントが付与される仕組みだ。

 情報銀行で個人に還元されるのはポイントなど経済的価値だけではない。大日本印刷(DNP)グループは、利用者に有益な情報を届けるモデルを模索する。

 情報銀行でさまざまな企業が持つ個人データを束ねれば、グーグルなど一企業が持つデータよりも精緻なものとなる。曖昧な情報で表示される広告は、時に的外れで不快感を与えることもある。しかし、精度の高い個人データから導き出した健康情報や資産形成の助言は、高い価値を持つ可能性がある。DNPでプロジェクトを率いる勝島史恵は情報銀行を「人生に寄り添うコンシェルジュのような存在にしたい」と語る。

 個人データの利活用は、暮らしを劇的に改善する可能性を秘める一方、使い方を誤れば監視社会につながる。それだけに「誰かが独占すべきものではない」と情報銀行の考えに賛同するのは、ポイントカード「Tカード」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)マーケティングカンパニー副社長の田代誠だ。同社は独占ではなく企業連携でTカードを7千万会員まで増やしてきた。

 データの主導権を個人が取り戻したとき、データの未来はどこへ向かうのか-。田代は徹底したデータ利活用で効率化された先にある社会を見据える。自由に使える余暇が増え、新たな趣味や体験をデータが提案し導いてくれる未来だ。

 「データ社会は殺伐としたイメージがあるが、実はゆとりの社会にすることもできる。私たちはそういうデータ社会を目指すべきだろう」=敬称略

【用語解説】情報銀行

 インターネット上に散らばっている個人データを特定の企業ではなく、個人の意思で一括管理し、開示の範囲や提供の有無についても個人が決定する新しい事業モデル。政府も大量のデータの円滑な流通を実現するうえで有効な仕組みとして推進している。重要な個人データを扱うため、経営面やセキュリティー面などを日本IT団体連盟が認定する制度も設け、すでに7社が認定を受けている。

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