【マンション業界の秘密】不況下で人材吸収する不動産業界 社会のセーフティーネット的な役割も

不動産業界は不況下でこそ良き人材を吸収する?

 私はもう35年以上も不動産業界の周縁で生きている。ひと口に不動産業といっても、家賃5万円のアパートの賃貸仲介から、数百億円のビルの売買まで、それこそピンキリの世界である。

 日本のマンション業界は、新築物件の開発・販売から中古の流通仲介や管理までバラエティー豊か。しかし、それぞれのノウハウはかなり異なる。例えば、新築の販売に携わる営業マンは、流通仲介に関する知識をほとんど持っていない。

 業界内の人の動きは激しく、最近、大手財閥系の流通系企業から大量の人員が流出したことが話題になっている。それこそ体育会系のゴリゴリ営業をやっている会社だ。流出した人員はどこへ流れるのだろう。

 不動産業界というのは、学歴や職歴に恵まれなくても、やる気と元気と根性があって、多少の才覚があれば頭角を現せる。「のし上がってやる」なんて野望を持っているタイプにとっては、悪くない業界だと思う。人間的な魅力がちょっと…という者でも、時に大きな成功を得られる可能性がある。

 この業界で必要とされるのは宅地建物取引士という国家資格だが、さほど難しくない。内容は法律関係がほとんどで、一部が建築関連。理系でも一級建築士を持っているような人は苦労せずに取得している。

 不動産というのは、究極的には土地である。ほとんどの建物はいつか朽ち果てて、最終的には取り壊される。だから土地の価値を見極めることが重要である。

 これも、小難しい理屈を理解する必要はない。誰もが住みたいとか、使いたいと考える土地に価値がある。そうでない土地には価値がない。

 つまり、不動産とは人間の根源的な「生きる」という活動に直結している。それだけに、通常の動物本能に起因する価値観を有していれば、基本的な良し悪しが判断できる。だからこそ、誰でも「鼻の利く」不動産屋になれる可能性がある。

 ただし、人間愛といった類いの感覚からは距離を置けるタイプが向いている。どういうわけか、この世界で成功した人にはコワモテが多いと言ったら怒られるか。

 また、この業界はとことん人間臭い。不動産には同じものがなく、人間も同じ。だからあらゆる取引が、すべて特別で特有である。ある程度のパターンはあるが、まったく同じものはないのだ。

 このカオスな状況が不動産業界だ。参入の垣根は低い割に、チャンスをつかめる度合いはそれなりに高く、あっという間に成功した人を何人も見てきた。

 さらに言えば、不動産業界は常に人材不足。それは量というよりも質の面で。不況期ほど優秀な人材を受け入れるセーフティーネットになっているのがこの業界ともいえる。


 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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