【マンション業界の秘密】変わる大阪・船場、東京・東日本橋…オフィスビルがマンションに建て替わる理由

東京駅、大手町に徒歩圏内の東日本橋。ここ数年、中規模マンションの建設が続く=東京都中央区

地場産業の低迷・衰退の陰で…

 東京で言うと山手線に相当するのが、大阪の環状線。その環状線の内側の真ん中あたりは「船場」と呼ばれるエリアになる。地下鉄の駅で言えば「淀屋橋」「北浜」「本町」などである。

 そこは伝統的な「商いの町・大阪」の中心エリア。大企業はあまり多くないが、中小企業のオフィスが集まっている土地柄であった。

 ここ10年ほど、その船場エリアで古くなったオフィスビルが猛烈な勢いでタワーマンションに建て替わっている。どういうことなのか。

 1つには、ビジネスの街としての大阪のパワーがかげってきたということ。東京への一極集中の反作用として、大阪の経済力が相対的に下がってしまったのだ。

 ただ、大阪の街には新型コロナの感染が広まる以前の2019年までは活気が感じられた。キタとミナミの繁華街には、インバウンドがあふれていたのだ。しかし、現在は見る影もない。

 コロナが世界的に収束すると、大阪には再びインバウンドが戻ってくるのだろうが、以前の勢いを取り戻すにはそれなりに時間がかかりそうである。

 一方、東京では昭和通りより東側の日本橋エリアが、大阪の船場のように中小企業を中心とした「商いの町」である。

 このエリアでも中小のオフィスビルが次々とマンションに建て替わっている。規制が厳しいせいか、タワーマンションは見かけない。

 この東西の両エリアの中小企業は、流通系が中心である。つまりは中小の商社や卸売業。ここ数十年の流れとして、店舗の大規模化やネットの普及で、メーカーと小売りをつなぐ流通業は衰退産業に位置付けられている。

コロナ禍に加え、空室率が急上昇

 そこに新型コロナの感染拡大が直撃した。多くの人が外出せずとも買い物ができるネット通販を日常的に利用するようになった。流通業の存在価値はますます薄まったのだ。

 折から、東京の都心ではオフィスの空室率が急上昇している。三鬼商事が発表している2021年6月時点の都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の空室率は6・19%。コロナが始まる前である20年1月時点は1・53%。この1年半で、完全に「借り手市場」へと変わった。オフィスを貸す側の経営環境は随分と厳しくなっている。

 船場や東日本橋界隈(かいわい)を歩くと、マンションに建て替わりそうな老朽オフィスビルがまだ数多く残されている。これから数十年の間に、それらは順次新築マンションへと変わっていく。

 このように都心エリアでは中長期的に新築マンション開発のベースとなる事業用地は、それなりのボリュームで供給される。特に船場や東日本橋などのように、衰退産業の中小企業が密集していたエリアでは、その傾向が顕著にみられるはずだ。

 しかし、目先のマンション市場はコロナによる住み替え特需で、価格が上がり切ったような状況である。市場をマクロな視点で眺めれば、危険な未来が待っているような気がしてならない。


 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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