【マンション業界の秘密】市場暴落の呼び水になるか「住宅ローン減税の大幅縮小」

湾岸タワマンのペアローン購入層に影響大

 住宅ローン減税の大幅縮小が決まった。所得税と住民税から差し引く控除率を残高の1%から0・7%に引き下げ、減税期間は13年に延長。年間の減税額は、最大で40万円から21万円に縮小される。

 これは、従来の「ローン残高の1%」という基準だと、現在の変動金利である0・4%前後より減税額の方が大きくなる「逆ザヤ」の矛盾を解消する狙いがある。

 しかし、住宅ローンの金利はいつまでも史上最低水準の0・4%前後に留まるとはかぎらない。だから、この控除率もローン金利のように「変動」にするのが合理的である。

 それはともかく、仮にこの縮小策が実施された場合、マンション市場にはどういう影響が出てくるのだろうか。長らく続いた都心エリアでの価格の上昇が、下落に転ずるきっかけになる可能性はあるのか。

 結論から言えば、そこまでのインパクトはなさそうである。というのも、住宅ローン控除の恩恵を受けているのは、ほとんどが住むために買う実需層である。彼らを購入ターゲットにしている郊外のファミリーマンションは、もう何年も前から販売不振が常態化している。

 だから近年、デベロッパー各社は郊外の開発事業は大幅縮小して、都心や近郊エリアを主戦場としてきた。そこで1億円以上のマンションを買っているのは、ローン減税などは気にしない富裕層や外国人である。

 もともと退潮気味の郊外市場で多く利用されてきた住宅ローン控除が縮小されても、マンション市場にとっては大きなマイナス要因とはならない。

 ただ、あるカテゴリーだけは別である。それは価格帯が7000万円から1億円程度の湾岸タワマンなどを、ペアローンで購入する需要層だ。彼らはお互いにローン控除の恩恵が得られることが、購入のモチベーションとなっていた。それが縮小されると、購入の意欲が減退する。

 したがって、ローン控除の縮小後は湾岸タワマンの販売には陰りが出る可能性がある。

 さらに言えば、湾岸の中古タワマン市場にもマイナスの影響が出るかもしれない。

 統計によれば、結婚するカップルの3組に1組は離婚する。つまり、ペアローンで購入された湾岸タワマンの3分の1は、数年後に中古市場に売り出される可能性がある。それを購入しようとするターゲットの主要層も、同様にペアローンを組むカップルである。住宅ローン減税が縮小されていると、彼らのモチベーションも以前ほどではなくなっているはずだ。

 マンションの価格も、基本的に需要と供給の関係で決まる。中古で売り出されている物件になかなか買い手がつかないと、価格が下落するのは当然の成り行き。

 そうでなくても、昨年のテレワーク特需で湾岸のタワマンは実力以上に値上がりした形跡がある。それが住宅ローン減税の影響で一気に調整されても不思議ではない。


 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

関連記事

  1. 「今年の食」飲料初選出、健康志向メニューも 続くコロナの影響

  2. 【家電の世界】世界中のネットワーク駆使、なくした物を発見! アップル「AirTag」

  3. 【コロナ禍の入院・介護・看取り】すい臓がんの夫を見送る㊤

  4. 【平賀充記の若者解体新書~キーワードで読み解くZ世代のトリセツ】⑩気が利く=超能力レベルにムズイっす…

  5. 【坂口孝則の目からウロコの経済学】ドン・キホーテの次なる挑戦

  6. 【平賀充記の若者解体新書~キーワードで読み解くZ世代のトリセツ】⑧「24時間戦えますか?」ってなんス…

  7. 【地方移住ナビ】広島県竹原市 自然とコンパクトな街魅力

  8. 【坂口孝則の目からウロコの経済学】小売店はVRで次の「夢」を見るのか

  9. 【スマートライフ×リアルライフ】怖がる必要ない新OS「ウィンドウズ11」

logo logo

連載

PAGE TOP