【マンション業界の秘密】腐敗もすれば派閥抗争も起きる管理組合 所有者は注意すべし

区分所有者の資産を食い物にする悪い奴ら。事件化するケースもある(写真のマンションとは関係ありません)

理事長=総理大臣、理事=国会議員、所有者=国民

 総選挙が終わった。18歳以上の日本国民は、国会へ送り出す自分たちの代表を選んだ。

 民主主義という制度は、英国の首相であったウィンストン・チャーチルが「最悪の政治形態」と嘆いた政治システムだ。しかし彼は、その後に「他に試みられたあらゆる形態を除けば」と付け加えている。

 実のところ、マンションの管理組合も、この民主主義の原則で運営されている。その基本となる法令は区分所有法である。

 区分所有者(各住戸の所有者)は理事という代表を理事会に送り出す。理事の選出は順送りの当番制でも、立候補を認める選挙制でもよい。そういったことは各管理組合が管理規約で定めることになっている。

 理事の中から管理者(通常は理事長と呼ばれる)を互選する。理事長は総理大臣で理事は国会議員だと思えばよい。区分所有者は国民だ。

 理事会の仕事は、国でいえば内閣と国会。つまりは行政と立法。日常的なマンションの運営や予算案の作成、決算報告。そしてマンション内のさまざまなルール作り。

 予算と決算は区分所有者全員に投票権がある年に一度の総会で承認(ごくたまに否決)される。これは出席過半数で可決。ただし、投票率は50%以上必要。

 区分所有者が毎月負担している管理費や修繕積立金は、税金みたいなもの。それをどう使うかを決めるのが予算案。どう使ったかの確認が決算だ。

 管理組合の基本的なルールである管理規約の変更には全区分所有者の4分の3の賛成が必要。これは、日本における憲法の改正並みにハードルが高い。ご存じのとおり、憲法の改正には衆参両院で3分の2以上と国民投票で過半数の賛成が必要だ。

管理会社に任せっきりではいけない

 マンションを購入して住んでいる人の多くは、こういった管理組合の基本的な仕組みを理解していないことが多い。例えば、理事の当番が回ってくるとPTAの役員を引き受けるような感覚で「仕方ないか」と受け止める。

 しかし、理事に課せられる業務と義務はPTAのそれとは本質的に異なる。何よりも、動かすお金の額が違う。

 例えば500戸のマンションなら年間に徴収する管理費や修繕積立金の総額は約2億円になる。それをどのように使うかの予算案は理事会が作成する。もっとも、ほとんどは管理会社がやってくれる。しかし、それが適正であるかどうかを最初にチェックするのは理事会だ。

 管理会社とは基本的に管理組合から業務を委託された外部業者だ。彼らに何もかもを任せっぱなしにすると、自分たちがもうかるような予算案を作成してくる。彼らの言いなりになると、組合の資産をどんどん吸い上げられる。

 管理組合の運営とは、言ってみれば政治である。

 管理組合も人間の集団である以上、腐敗することもあれば派閥抗争も起きる。運営ルールの基本は民主主義。今のところ、この「最悪の政治形態」で運営する以外の手法は見つかっていない。


 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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