一般サラリーマン向け「郊外の新築販売」が絶不調 残業代激減が影響か

コロナで激変した不動産市場。収束後の傾向を読み切れるか

 私はマンション市場を観察してアレコレ言うことを仕事にしている。もう十数年になるが、今ほど都心と郊外のギャップを感じたことはない。

 基本的には、マンション市場は中古も新築も景気に連動する。株価が高い時には都心でも郊外でも新築物件はよく売れた。

 今も都心エリアで販売される1億円以上の新築物件は、そこそこ売れている。だが、一般的なサラリーマンが35年返済の住宅ローンを組んで購入するような郊外の新築物件は販売が絶不調。完成在庫が積み上がっている。この現象は関東圏でしっかりと確認できるが、関西圏ではより顕著だ。

 なぜ、こうした違いが生じるのか。やはり新型コロナの感染拡大という特殊事情がある。

 2020年の春以降、コロナによってサラリーマンの働き方が変わった。出社せずに自宅で仕事を行うテレワークが普及した。これによってそれまで「寝に帰る」ために買われていた都心の狭いマンションに対する需要が薄れた。代わりに豊富な共用スペースがテレワークにも使える湾岸の中古タワーマンションや、郊外の格安な中古戸建てに需要が向かった。そういった物件は今も品薄になっている。

 郊外の新築大規模マンションは一番売れる時期の1月から3月にかけて、数戸しか成約できなかった物件も少なくないという。

年収200万円ダウンのケースも

 コロナによって年収数百万円のサラリーマンにとっては「冬の時代」となった。彼らは20年4月の緊急事態宣言で在宅勤務を余儀なくされ、残業代や休日出勤手当が激減し、年収が800万円から600万円に減ったというような人が結構いる。

 そういう層を主要なターゲットにしてきた郊外の価格3000万円台から5000万円台の新築マンションが軒並み販売不振に陥ったというわけだ。

 ただ、メガバンクや大手商社、外資系金融などのサラリーマンはほとんど収入を減らしていない。IT企業や中小不動産会社の経営者、個人の不動産投資家などはコロナ禍で収入を増やしているケースも見かける。持続化給付金やコロナ対策の緊急融資も彼らの懐を温かくした。

 そんな富裕層にとって、1億~2億円程度の都心のマンションは立派に購入検討範囲内となる。

 このように大都市のマンション市場は富裕層向けは好調、郊外の一般所得者向けは低調、ないし不調といった具合だが、市場の主要なプレーヤーは、やはり一般的なサラリーマンだ。そのことを忘れると、不動産業者は、再び痛い目に遭うことになる。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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