【マンション業界の秘密】恥ずかしい「マンション」という和製英語 英語では「大邸宅」

大邸宅が立ち並ぶアメリカ・ビバリーヒルズ。これが本当の「マンション」だ

「アパート」の差別化で生まれたワード

 先日、米国フロリダ州マイアミにあるマンションが崩落し、多数の犠牲者が出た。高層建築が、突然ガラガラと崩れるというのは日本では考えられないことだが、私は別の事象に注目した。それは「マンション」というワードが当たり前のように使われていたからである。

 マンションは完全な和製英語だ。英語のマンションはゲートから車で何分も走ってやっと館の玄関に着くような大邸宅を意味する。70平方メートル程度の3LDKや、ましてや25平方メートルくらいの部屋が1つしかない集合住宅の一室を表すものではない。

 業界の片隅で生きている人間として、私が恥ずかしく思うことの1つが、このマンションという名称である。

 調べると、1960年代から鉄筋コンクリート造の集合住宅のことをこう呼び始めたらしい。当時の不動産業者が、和英辞典から引っ張り出したワードなのだろう。

 木造の賃貸用集合住宅は「アパート」だった。それとの差別化を図るためで、不動産業者が原語の意味を正確に理解していたとは思えない。

マンションのネーミングも陳腐化

 そもそも不動産業者は上っ面を気にする。私は長らく新築マンションの分譲広告の制作に携わってきたが、彼らが異常にこだわるのがネーミングだ。物件の名称が販売の好不調を左右すると本気で考えている。

 私の経験上、1つの物件の名称を決めるために100以上のネーミング案を出さされることは普通だった。だが、最終的に決まるのはいたって陳腐なものだったりする。

 3年ほど前、私は拙著「限界のタワーマンション」(集英社新書)の取材で英国紳士に取材する機会を得た。その際、「ハウス」と「タワー」と「レジデンス」というワードがすべて含まれる、湾岸エリアにできた17文字のタワーマンション名を「どう思うか」と聞いてみた。

 その英国紳士はあきれ顔で「コンピューターが故障したんじゃないの。まったく意味が理解できない」と答えた。

 そもそもマンションという呼称すら恥ずかしい。しかし、日本ではそれが鉄筋コンクリート製の集合住宅の呼称として定着し、そのワードを使った法律さえ存在する。もはや「ガソリンスタンド」や「アフターサービス」と同じように日本語になってしまった

 実のところ、マンションというワードの語感は悪くない。だからこそ定着したのだろう。英語が母国語の人々にとっては、とんだお笑いネタかもしれない。

 日本には集合住宅の文化が芽生えつつある。そろそろ「マンション」を卒業すべきではないのか。


 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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