【マンション業界の秘密】誰にも止められない「用地開発」のジレンマ

一般的なサラリーマンの年収では手が届かなくなってきている(写真と本文は関係ありません)

高い土地を買い続けて膨らむバブル

 私はもう35年ほどマンション業界の周辺で生きている。この間、大まかに2回のバブルの生成と崩壊を眺めた。そして今、3回目のバブルが膨らみ続けている。これもいつか弾けるだろう。過去2回の崩壊を目の当たりにした者として、いつかその時がやってくることを疑ったりはしない。同年代の業界人も、そのことは分かっている。いつか必ず狂騒は終わるのだ。

 しかし、業界の真っただ中にいる人々は、分かっていても、バブルに合わせて踊り続けるしか選択肢はない。

 典型は、デベロッパーでマンション用地の仕入れに携わる者たちだろう。業界では「仕入れ」「用地開発」という呼ばれ方をしている。

 彼らはマンションを開発できそうな土地を購入することが業務だ。だが、今は「こんなに高くては買えないよ」というような土地しか出てこない。そんな状況が7年程度、続いてきた。だったら、その間、彼らは土地を買わなかったのかと言うと、そうではない。ノルマがあり、みなサラリーマンなのだ。

狂騒の中で踊り続けるデベロッパー

 サラリーマンは目標を達成しなければ組織から弾かれ、出世競争から脱落する。そこで彼らは「これを買うしかありません」と言って稟議(りんぎ)書を上げる。決済する経営陣もサラリーマンだ。その高く買った土地に建てたマンションが売れなくても、自社の経営が傾くなんてことにはならないことは、容易に予測できる。仮にそうなっても、彼らが退職金をもらって退任した後だから重く考えない。

 そこで、稟議書にハンコを押す。約1年半後、その土地で開発されるバカ高の新築マンションが売りに出される。高額の商品ではあるものの、ヨタヨタとしながらも売れてしまう。その頃、社内では、さらに高い土地を買う稟議書が回されている。

 このサイクルを繰り返してきた結果、この7年で、都心の一等地のマンション価格は倍近くまで値上がりした。

 仕入れの担当者も、稟議書にハンコを押した重役たちも十分知っている。「こんなバカなことはいつか終わる」。未来のどこかで売れなくなり、高値で仕入れた在庫を抱えて青ざめる日は必ずやってくる。

 だから、彼らは薄笑いを浮かべながらバブルの狂騒の中で踊り続け、「もうやめよう」とは決して言わないのだ。

 仮に、言ってしまった後、バブルが膨らみ続ければ、「やめよう」と言った人間が責任を取らされる。彼らはリスクを取ろうとしない。弾けたとしても、「あの時、誰にもバブル崩壊なんて予想できなかったんだ」という言い訳で済む。

 かくして、バブルは今も膨らみ続けている。


 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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