【マンション業界の秘密】「売り」を難しくする仲介業者の体質

 私は2カ月に1度ほど不動産売却相談会という無料のイベントを開催している。日本橋横山町(東京都中央区)にある不動産仲介業者の会議室が開催場所。毎回3組から5組程度の相談者が来る。そこに持ち込まれた案件で、私の提携業者が仲介を依頼されることもある。それでうまく売却できれば、私が多少の紹介料をいただけるので「無料」で行えるというスキームだ。

 ただ、私もその提携業者もがっついていないので、1回の相談会で1件の仲介契約があるかないか、という状況だ。

 ただ、何組かのエンドさん(エンドユーザー=一般消費者)と話をするなかで、持ち込んでくれた不動産の中身や、売却する理由などを聞くことができる。これは私にとっても提携業者にとっても、非常に貴重なマーケット情報となる。もちろん、守秘義務はしっかりと守っている。

 先日、相談にきた方は不動産のプロだった。対エンドではなく、もっと川上にいる方で、マンションのデベロッパーに土地と事業計画をセットで売り込むような仕事をしていた。業界では「専有売り」などと呼ぶカテゴリーだが、大きくは、われわれと同業の範囲内に入る。

 で、申し上げた。

 「別に私に相談しなくてもよくお分かりでしょう」

 だが、そうでもないとのことだった。自分の住むマンションを売る場合は、エンドと同じ扱いになるという。

自己利益優先、違法行為が横行 

 つまり、普通のエンドみたいな顔をして駅前に店舗を構える大手の仲介業者に依頼しようものなら、彼らは売りと買いの両方から手数料を取る「囲い込み」という違法行為を平気で行うし、場合によっては、市場よりかなり割安な価格で、買い取り業者にはめ込もうともするそうだ。

 デベロッパーに事業を卸すような川上に従事するこの方は、私から見れば、マンションを1戸単位で扱う仲介業者に比べると、はるかに高度な不動産取引のノウハウと知識を有している。そんな彼らが仲介業者を訪ねると、一般的なエンド扱いにされるというのは、私からすれば、一種のコントである。

買うより売るほうが難しい

 残念ながら街中の仲介業者の業務知識レベルはそんなに高くない。たとえ大手の看板を掲げようと、末端の店舗で営業の現場に立つ層は、業界のそういう高度な同業者の正体を見抜けず、気づきもしない。川上の方は、苦笑しながらそのようなエピソードを話してくれた。

 マンションは買うより売る方が難しい。その難しさの大半は、仲介業者の多くが売り手よりも自らの利益を優先する体質にある。

 困ったことに、この傾向は大手に顕著で、「囲い込み」という違法行為が横行しているのが現実でもある。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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