【マンション業界の秘密】代々の富裕層に嫌われる「タワマン」の威圧感

青空に映えるタワーマンションだが…(写真は本文とは関係ありません)

欧州人は高層建築そのものを好まない

 マンションに関してアレコレと発言する仕事を始めて13年ほどになる。当初からタワーマンション(タワマン)に関しては懐疑的な視点を示し続けてきた。2年前にはそれらの考えを集約した「限界のタワーマンション」(集英社新書)という拙著を世に問うた。

 実はその頃から、私以外にもさまざまな視点からタワマンという住形態に対して、懐疑的な見解を表明する人が増えていた。今やこの超高層住宅に疑問を呈する考え方は、一定の市民権を確立した印象を持つ。懐疑的な見方は、以前からあったはずだが、タワマンブームに押されて、そういう考え方が表に出てこなかっただけではないかとも思う。

 私が見る限り、東京の都心や湾岸エリアにあるタワマンは、ニューカマーでプチリッチな人々が好む住まいだ。親の代から富裕層に属していた人々が、それを喜んでいるケースはほとんど見かけない。

 例えば、ヨーロッパ人は一般に高層建築そのものを好まない傾向にある。高層階での子育てなどは論外という考え方の人が多い。

 タワマンは低廉な費用の住宅という感覚らしい。4年ほど前にロンドンの高層マンションで火災が発生し、約70人の方が亡くなった。あのマンションが低層者向けの住宅だったことが、日本のメディアでは多少の意外性をもって報道された。

 私は前述の拙著のために複数のヨーロッパ人に取材した。その結果、高所得や高学歴になるほどタワマンを忌避する傾向がみられたのは、意外な発見だった。

京都市には1棟もなく鎌倉市は限られた地域に

 日本でも超高層住宅に拒否反応を示す人々、エリアがある。分かりやすい例でいえば、京都市や神奈川県鎌倉市だ。容積率が1000%を超えることが多いタワマンは、一般的に行政が規制を緩和しないと建築できず、市民が反対するエリアでは造りにくい。

 京都市には1棟もタワマンがない。鎌倉市でタワマンがあるのは東海道線の大船駅周辺に限られる。横須賀線の鎌倉や北鎌倉駅周辺には、通常の高層建築すらほとんど見かけない。神戸市では市長が3年前に三ノ宮駅周辺には、この建造物を造らせないという方針を示した。

 人々に避けられる理由の1つは、造形物としてのたたずまいだろう。周りを圧するような存在感と見下ろされるような圧迫感は、いくら外観の意匠を飾っても、それを完全に排除することはできない。

 いまでこそタワマンを好む層は多数派だが、そう考えない人々はさらにじわじわと増えている。懐疑派が多くを占めるようになったとき、タワマンの増殖スピードは鈍り、資産価値評価も低くなるはずだ。


 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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