【マンション業界の秘密】テレワーク特需下も…コロナ後の住宅市場に危険な“風景”

アフターコロナの住宅市場。業界は動向を読み切れるか

購入のほとんどは実需…バブルではない

 東京都心とその周辺では住宅が良く売れている。特に新築の戸建てと中古マンションの動きがいい。湾岸エリアの中古タワマンなどは、売り物件が不足するほどだという。価格も上がり気味ではあるが、上昇幅はそれほどでもない。バブル的な値上がりではないようにうかがえる。

 理由は、購入のほとんどが実需だからだ。「住むため」に買っている人がほとんど、ということである。

 やはり、テレワークのためのスペースを求めての購入が主体となっている。逆に考えれば、テレワークから通常の出勤体制に戻ると、こういった住宅購入のブームは終わるのだろうか。

 先進国の中では最下位水準に甘んじるわが国のワクチン接種も遅くはあるが、進んではいる。今年の終わりごろまでには、希望者への接種はおおむね完了しそうだ。

 すでに米国や英国では接種率が人口の半数を超えて、「コロナ後」が始まろうとしている。米国では時ならぬ住宅建設ブームとなっているが、コロナ禍が過ぎればそういう動きは収束するかもしれない。

需要“先食い”の反動が来る

 日本では多くの人がコロナによって住宅購入の時期を早めた。これが今の好調な住宅の売れ行きの中身だと考えれば、それは需要の“先食い”でしかない。必ずや反動がやってくる。需要の急激な減少である。

 2011年の東日本大震災の時、首都圏ではガソリン不足が起こった。原因は、多くの人々が自分の車のタンクを満タンにしようと考えたからだ。

 昨年、コロナ禍が始まった頃に、一時的にトイレットペーパーが買えなくなった。多くの人が万一のときに備えて、購入に走った結果である。

 ガソリンもトイレットペーパーも工業製品である。現代社会においては供給が不足するとは考えにくい。また、需要も人口に相当する分量しか発生しない。だから一時的に品不足に陥ったからといって、ほとんど値上がりしなかった。

 マクロ的に考えれば、マンションや戸建てといった住宅も、本来なら人口や世帯数に応じた需要しか発生しない。ただし、生産数が限られているのでちょっとした需要の波で価格が大きく変動したりする。

 さらに、住宅はガソリンやトイレットペーパーと違って転売できる。一般的な経済法則に加えて、人々の思惑という計測が困難な要素が価格形成に大きく影響する。しかし、最後はやはり「住むため」という需要の動向に価格は帰結する。

 コロナ後が見えてきた今、住宅関連業界は、テレワークによる特需後の風景を予測しているはずだ。これに乗り遅れたりすると、痛い目に遭う。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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