【薬漬けにならないための基礎知識】アプリも登場「お薬手帳」残薬や薬漬けを減らそう

ぜひ「おくすり手帳」を活用しよう

医療費も少し安価に

 高齢者は複数の病院にかかったり、同じ病院でも複数の科にかかることが多くなりました。それもあって、「薬漬け」はいっこうに改善されません。厚労省の調査(2020年)によると、65~74歳の15%が7種類以上の薬を処方されています。75歳以上になると、26%に跳ね上がります。

 また、「残薬」と言って、病院で処方された薬を飲み忘れたたり、途中で服用をやめたりして余った薬は莫大な数に上ります。厚労省の調査では約90%の人が残薬を持っていて、約55%の人が医薬品を余らせた経験があると回答しています。残薬は壮大な資源の無駄です。各自治体では医療機関とともにさまざまな取り組みを行っています。

 ①患者の残薬数を把握して処方日数の調整を行う②患者の生活習慣にあった用法へ変更する③服用が難しい錠剤から粉薬など飲みやすい薬に変更する④1回に何種類かの薬を服用する場合1回服用分ごとにまとめる―などです。

 残薬を出さない、薬の数を減らすなどは、医師や薬剤師と相談のうえに行うのが基本です。もちろん、知識を得てご自分でやってもかまいませんが、そのときに便利なのが「お薬手帳」です。

 そもそも、お薬手帳というのは、病院などで処方された薬の情報を記録し、その服用履歴を管理するためにつくられました。こうすることで、薬の飲み合わせのチェックなどができ、投薬がスムーズに行われるというメリットがありました。そのため、国はこれを診療報酬制度に組み入れて実施してきましたが、その制度はこれまで何度も変更されました。

 お薬手帳が真価を発揮したのが東日本大震災です。カルテや調剤履歴を喪失した病院や薬局が続出しましたが、お薬手帳を持っていた患者さんは、スムーズに診療や投薬ができたのです。

 お薬手帳を持っているのと持っていないのとでは、医療費が違います。持っているほうが40円安くなります(3割負担の場合)。具体的には「薬剤服用歴管理指導料」が安くなります。「薬剤服用歴管理指導料」とは、薬剤師が患者さんに対して提供する薬の情報やアドバイスの料金。通常は570円ですが、お薬手帳の提示で430円になり、3割負担の場合なら差額の3分の1=40円が安くなるのです。

 ただし、手帳を持っていても安くならない場合もあります。かかりつけの病院に通い、薬局もいつも決まった薬局を使っていたとしても、たまになにかの都合で別の薬局に行くケース。この場合は、安くなりません。

 現在、お薬手帳は電子化が進んでいます。大手調剤薬局チェーンでは、独自で専用アプリを開発し、スマホで管理できるサービスを展開しています。調剤明細にはQRコードが印刷されています。このコードを読み取るだけで、アプリ内に処方箋の内容が記録されます。お薬手帳アプリは、紙のお薬手帳と同じように活用でき、同様に「薬剤服用歴管理指導料」も安くなります。服薬アラームや処方箋予約などの機能も充実しています。

 最近のお薬手帳アプリは、健康管理機能がついたものや、家族の情報まで一緒に管理できるものもあります。また、診療情報や検査情報、お薬手帳などをまとめ、患者がいつでも内容を確認できる「診療記録アプリ」も登場しています。

 本来なら、医療情報に関しては、すべてを一元化してデジタル管理すべきですが、日本はまだそこまでいっていません。いずれにしても、現行のアプリでも処方箋予約機能を使えば、写真撮影した処方箋を事前に送信しておくことで待ち時間を短縮できるなど、非常に便利です。 =おわり


 ■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。「不要なクスリ 無用な手術」(講談社)ほか著書計67冊。

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