【薬漬けにならないための基礎知識】処方される薬の3分の1は無意味!?

その薬、理解して飲んでいますか?

「薬は5種類まで」副作用のリスクも

 新型コロナは基礎疾患のある高齢者に多大なリスクをもたらしました。基礎疾患と言えば、高血圧や糖尿病などが主流ですが、そうした患者さんは何種類もの薬を飲んでいるのが普通です。しかし、薬は飲めばいいというものではありません。必ず副作用を伴うからです。また、飲みすぎると、新型コロナのような感染症に対して、ヒトが本来備えている自然治癒力を弱めてしまいます。薬の基礎知識について改めて考えてみましょう。

 これまで私が出会った患者さんのなかには、20種類以上の薬を飲んでいる方がいました。私と同じように心疾患と糖尿病の持病を持つ方でしたが、聞くと「どうやって減らしていいのかわからない」と言うのです。また、個々の薬がどんな効果があるかもわかっていませんでした。

 私も、降圧剤や血糖降下薬を飲んでいますが、服用にはきわめて慎重です。患者さんに対しては「薬は5種類まで」と言ってきました。

 アメリカでは、5種類以上の薬を飲んでいる状態をポリファーマシー(多剤併用)と呼び、問題視されています。調査によると、ポリファーマシー経験者のうち、4割以上の人間が、1つ以上の不要な薬を飲んでいました。アメリカでは、医療の無駄を無くすためのチュージングワイズリー(賢明な選択)というキャンペーンがあり、「薬漬け」を減らす努力が行われています。たとえば、「この薬は現在の患者の状態を考えて本当に必要か」「副作用リスクが、有益性を上回っていないか」などの項目でチェックが行われます。

 日本でも、2016年に「チュージングワイズリー・ジャパン」ができましたが、それほど広まっていません。

 一般的に日本人は薬が大好きです。病院に行くと、必ず薬をもらいます。薬がないと診てもらった気がしないという高齢者が多いのです。年間の「残薬」(服用されずに廃棄される薬)は1000億円を超えているという説もあります。

 とくに、降圧剤、コレステロール降下剤、血糖降下薬など、高齢者が飲み残す薬の額は年間500億円以上といいます。処方されている薬の半分が無駄になっているのです。そのうち3割は飲まなくてもいいものです。

「薬漬け」の原因は日本独特の診療報酬システム

 「薬漬け」の原因の多くは、日本独特の診療報酬システム(国民皆保険制度)と、病院と製薬会社の癒着にあります。つまり、保険適用の薬なら1~3割負担で済み、病院は薬を多く出すことで儲けられるからです。

 患者にどんな薬を処方するかは医者の判断一つです。そのため、医者によって高価な薬を出したり、疾患と直接関連しない薬を出したりもします。これは、薬の仕入れ値が国が定めた公定価格からかなり割り引かれているからです。つまり、その差額である「薬価差益」を病院は確保しようとするのです。

 現在は、医療機関と薬局を切り離す「医薬分業」が進み、薬は薬局が仕入れるため、薬価差益の問題は減りました。しかし、なお3割ほどの医療機関ではまだ院内処方を行っています。

 大手製薬会社は、新薬を開発すると、大規模な宣伝活動を行います。そうして、MR(医薬情報担当者)が医者に「この薬を使ってほしい」とプロモーションと接待を行い、医者はそれに乗ります。しかし、新薬の効果のほどは治験数が上がらない限りよくわからないのです。また、経済原理から言えば、多くのモノは新製品が出るごとに安くなりますが、薬だけは例外で、新薬になればなるほど高くなるのです。

 ただ黙って、医者の言いなりに薬を出してもらってはいけません。必ず、薬の効果と値段を聞き、納得してから処方してもらうべきです。


 ■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。「不要なクスリ 無用な手術」(講談社)ほか著書計67冊。

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