【加藤梨里のお金と健康】将来の遺言書にも使える 健康なうちから「財産目録」を作る意味

今回も前回に引き続き、相続対策についてお届けします。実家の親が高齢になってくると、だんだんと相続対策を考え始める人が増えてきます。お金のことは家族といえども話しにくいものですが、何も準備をしていないと、いざというときに家族に負担がかかる恐れもあります。そこで早めに取りかかっておきたいのが、財産目録です。相続対策だけでなく、老後の生活にも役立てることができます。

■財産目録とは

 財産目録とは、すべての財産を一覧にしたものです。現金や預金、土地や建物といった資産のほか、ローン、借金といった負債も含めて、種類別にまとめます。財産目録を作ることで、その人がどこにどんな財産を、いくら持っているのかを把握することができます。

 作成した財産目録を使うのは、おもに相続に関わる場面です。遺言書に添付するとき、亡くなった後に家族など相続人が遺産分割の協議をするとき、相続税の申告書に添付するときが挙げられます。財産の内容や金額がわかれば、どの遺産を誰が受け取るのかを考えやすくなりますし、相続税の計算根拠にもなります。

 また、本人の判断能力が低下したときに、財産の管理や契約の代理などをしてもらうために成年後見制度を利用する際にも、財産目録が必要になることがあります。

■通帳のコピーでもOK

 財産目録というと難しくて堅いイメージがあるかもしれませんが、相続対策として作るときには基本的に決まった形式はありません。たとえば遺言書を書いて財産目録を添付する場合、自分で書く「自筆証書遺言」なら、パソコンで作成した目録や預金通帳のコピーなども認められています(2019年1月以降に作成した目録が対象)。ただし成年後見制度を利用する際や、亡くなった後に相続税を申告する際には、それぞれ指定された書式を使うことがあります。

 どんな目的で使うにせよ、まずは財産を洗い出して金額を確認し、まとめていく作業が必要です。時間と手間がかかることですので、あらかじめ材料を集めておくだけでも、後の助けになるはずです。

■何が財産に含まれるか?

 そもそも「財産」というと、具体的にはどんなものが含まれるのでしょうか。まず挙げられるのは現金、預金、株式、投資信託などの金融資産です。日頃から使っている預金通帳や金融機関から送られてくる郵便物、金庫のなかにある現金や証券類を確認してみましょう。名義変更や住所変更ができていないままのものがあれば、早めに手続きをしておくきっかけにもなります。

 また、自宅や土地などの不動産、自動車やバイク、貴金属、宝石、高額な時計、美術品、ゴルフやリゾートの会員権も、財産に含まれます。探してみると、意外と多くの財産が見つかるかもしれません。中には、老後の生活に使えるものも出てくるでしょう。

 忘れてはならないのが、ローンや借金などマイナスの財産です。住宅ローン、自動車ローン、カードローンがあれば、借入残高を確認します。個人間で借りたお金も、誰からいくら借りているかを書面に記録しておくと、トラブル防止の観点でも重要です。

■生命保険も含まれる

 上記は一般的に生前に作る財産目録に含まれる財産ですが、亡くなった後に相続の手続きで使うときには、他にも加えておくべき財産があります。たとえば生命保険金は「みなし相続財産」といって、受取人固有の財産として基本的に遺産分割の対象からは外れますが、相続税を計算するときには課税対象になります。相続税の申告書には、生命保険金の金額を記載します。

 生命保険金は「500万円×法定相続人の人数」までは非課税になり、相続税額がいくらになるかにも関わってきます。また、遺産相続について家族で話し合うときには、誰が生命保険をいくら受け取るかを考慮して、ほかの遺産をどのように分けるかを決めるのが一般的でもあります。相続準備に向けては、生命保険もまとめておきたいところです。

 財産目録とまではいかなくても、これらをメモ程度でもいいので一度まとめておくと便利です。財産の全容がある程度でも早めにわかれば、相続対策について税理士など相続の専門家に相談する際に使えます。また、老後のお金が足りるのか、万一の時にどうなるのかなど、漠然とした不安を抱えているときに、財産の種類や金額がわかると、将来のことを多少イメージしやすくなります。

 自宅にあるものや持っている財産を洗い出す作業は、時間も手間もかかります。できれば健康で、体力があるうちから始めておくと安心です。帰省シーズンに家族が協力しながら進めるなど、定期的に確認してもいいかもしれませんね。


■加藤梨里(かとう・りり)ファイナンシャルプランナー(CFP®)、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー、マネーステップオフィス株式会社代表。保険会社、信託銀行、ファイナンシャルプランナー会社を経て独立。専門は保険、ライフプラン、健康とお金。大学では健康増進について研究活動を行い、健康経営のコンサルティング支援をした企業が中小企業のトップ500「ブライト500」に認定。

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