【加藤梨里のお金と健康】熱中症の医療費、保険はきく?生命保険はおりる?

厳しい暑さが続き、熱中症による救急搬送が急増しています。マスクをつけて過ごす猛暑日は、新型コロナの感染だけでなく熱中症のリスクにも注意が必要です。では、もし熱中症になったら、医療費はどれくらいかかるのでしょうか? また、保険はきくのでしょうか。

熱中症で治療を受けたら保険は「適用」

 毎年夏になると心配な熱中症。消防庁のまとめによると、熱中症による救急搬送件数は梅雨明けシーズンの7月以降から急激に増加し、ピーク時は1週間で8000人以上に上りました。コロナ禍が長引き、外出自粛の気運が薄らぎつつある影響か、搬送数は昨年に比べて全国的に多い傾向にあります。東京都では6月からの2カ月間で救急搬送された人が累計1871人で、昨年の2倍以上でした(消防庁のデータより)。

 熱中症になったとき、病院で治療を受けると医療費がかかります。軽症なら外来での治療のみで済み、その日のうちに帰宅するケースもあります。その場合にかかる医療費は診察代や点滴治療の投薬料などに限られます。しかし入院が必要なら入院費がかかります。個室に入院すれば差額ベッド代もかかります。重篤な状態でICUなど重症患者向けの病床に入れば、入院費用はさらに高額になります。

熱中症の症状と重症度(環境省HPより)

 一方でいずれも治療費には公的保険がききますから、医療費の自己負担は年齢などに応じて1~3割ですみます。外来だけなら、自己負担する医療費は数千円程度におさまることが多いでしょう。

■民間の生命保険はおりる?

 では、保険会社で契約している保険はおりるのでしょうか?これは、保険の種類や契約内容によって異なります。

 例えば、病気・ケガの両方に備えられる医療保険は、熱中症で入院した場合に給付の対象になります。生命保険の医療特約も含め、入院したときを対象にした保険なら入院給付金を受け取れます。

 受け取れる給付金は契約内容によって異なります。入院日数に応じて「1日1万円」など日額が支払われるタイプや、日数にかかわらず一時金がおりるタイプがあります。10年以上前など、かなり昔に契約した医療保険の場合は入院日数が5日以上、20日以上でないと給付されないものがありますが、比較的新しい保険には日帰り入院でも給付されるものがあります。

 通院も保障する保険なら、退院した後に経過観察などで通院したときにも給付金を受け取れることがあります。通院1回につき3000円や5000円程度に設定されているのが一般的です。ただし、入院をせずに外来だけで治療が済んだ場合には給付されないことがほとんどです。

■けがの保険・子供の保険でおりることも

 けがに備える傷害保険で、熱中症に対応できる場合もあります。けがの保険というと交通事故に遭ったときや、スポーツやレジャーによるけがをイメージするかもしれませんが、契約内容によっては熱中症になったときにも補償されることがあります。

 補償されるのは、「熱中症危険補償特約」というオプションがついている場合です。おもにけがを対象にした傷害保険に付帯できます。熱中症で治療を受けたときや入院したときに保険金がおりるしくみになっています。

 子供が学校や幼稚園、野球チームや少年団などのスポーツ団体を通して契約する傷害保険では、はじめから熱中症への補償がセットになっていることがあります。学校の授業中やクラブ活動中、課外活動中に熱中症になった場合はもちろん、登下校中も対象になるのが一般的です。生活総合保険、学生総合保険、団体傷害保険などの名称で、新学期や入学時などに学校から案内されて、学校に申し込みをして契約していることも多いです。

 傷害保険から受け取れる保険金額は保険の契約内容によって異なりますが、熱中症で入院したときや通院をしたときに、あらかじめ決まった金額が定額で支払われるものが多いです。1日あたり3000円~5000円程度に設定されているのが標準的です。生命保険とは異なり、入院をせず通院のみでも保険金がおりることもあります。

■クレカ付帯の保険・旅行保険は対象外の可能性

 傷害保険のなかには、旅行中を対象にしたものやクレジットカードに付帯される保険もあります。これらは、状況によっては熱中症が補償されないことがあります。

 旅行保険の場合、補償されるのは旅行中が基本です。旅行に出発してから帰宅するまでの間に熱中症を発病したら対象になりますが、旅行が終わってから72時間を過ぎてから、または旅行中に起きたのではない原因によって発病した場合には、補償の対象外です。日常生活での熱中症も補償されません。

 また、海外旅行傷害保険では旅行中に熱中症で治療を受けたときに、現地でかかった治療費用の実費が保険金としておりるしくみになっていることが多いですが、国内旅行を対象にした保険では対象外になっていることがあります。

 クレジットカードには、会員向けのサービスとして旅行保険が付帯されていることがあります。補償内容は基本的な旅行保険と同じで、多くは海外旅行中に熱中症になった場合に治療費用が実費でおります。ただし、カードの会員ランクによって補償される範囲や保険金額が違ったり、旅行中にカードを使うことを要件としていることがあります。

 軽症であれば医療費の負担はそれほど重くないことから、熱中症のためだけにわざわざ保険に入ることは考えにくいでしょう。むしろすでに加入している保険から、熱中症になったときに保険がおりることがあります。もしもの際には、契約している保険の内容を確認してみましょう。


■加藤梨里(かとう・りり)ファイナンシャルプランナー(CFP®)、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー、マネーステップオフィス株式会社代表。保険会社、信託銀行、ファイナンシャルプランナー会社を経て独立。専門は保険、ライフプラン、健康とお金。大学では健康増進について研究活動を行い、健康経営のコンサルティング支援をした企業が中小企業のトップ500「ブライト500」に認定。

関連記事

  1. 今日は何日?すぐ答えられますか?

  2. 【加藤梨里のお金と健康】認知症の人が賠償事故を起こしてしまったら? 自己負担なしで加入できる保険も

  3. 【「70歳定年」どう生きるか】政府やメディアは勧めるが…75歳への年金受給繰り下げは得なのか? 

  4. 【加藤梨里のお金と健康】コロナ治療に生命保険金は支払われるか?

  5. 【加藤梨里のお金と健康】8月から介護保険の自己負担増~費用負担のしくみとは?

  6. 仕事のミスが増えてませんか。そんなときは… 

  7. 【「70歳定年」どう生きるか】残酷な70歳就業法 老化の抑制には限界

  8. 【加藤梨里のお金と健康】コロナと医療費 いくらかかる?

  9. 【いまさら聞けない高血圧④】高血圧治療で薬を一生飲み続ける理由

logo logo

連載

PAGE TOP