【加藤梨里のお金と健康】8月から介護保険の自己負担増~費用負担のしくみとは?

今年の8月から、介護サービスを利用したときの介護保険の負担が見直されました。一部の人には、利用料の負担が増加しました。介護保険の自己負担のしくみと改正内容について解説します。

8月から自己負担の上限額が一部アップ

 リハビリや入浴介助、食事介助といった介護サービスを利用したとき、費用の負担は介護保険によって1割から3割に抑えられています。65歳以上の場合、一般的に自己負担は1割(所得が一定以上ある場合には2割または3割)です。しかし、日常生活をサポートしてもらうために介護サービスを継続的に利用していると、1割負担であっても家計の出費が膨らみがちです。そこで、介護保険には「高額介護サービス費」といって、1カ月に支払った自己負担の合計が上限額を超えたときに、超えた分が払い戻される制度があります。

 一般的な年金収入で暮らしている人の場合、高額介護サービス費の自己負担限度額は1世帯あたり月44,000円です。従来は収入の多い世帯でもこの上限額は共通でしたが、2021年8月から年収の区分が新設され、収入が多い世帯では自己負担限度額が引き上げられました(厚生労働省のお知らせ⇒https://www.mhlw.go.jp/content/000778218.pdf)。

 引き上げの対象になるのは、65歳以上で年収約770万円以上の人がいる世帯です。年収約770万円~約1,160万円未満なら、高額介護サービス費の上限額は月93,000円、年収約1,160万円以上なら、上限額は月140,100円になります。年収が770万円未満の場合は、これまでと変更はありません。

 収入の判定は、介護サービスを利用する人または同じ世帯で暮らす家族のうち、65歳以上の人の年収が基準になります。

■介護施設での食費が一部アップ

 もうひとつ8月から変更されたのが、介護施設での費用負担です。ショートステイや介護老人福祉施設、介護老人保健施設などを利用している人のうち、収入が一定以下の場合には、施設での食事費用の補助があります。補助によって1日あたりの食費は定額になっていますが、この日額が改正によって一部引き上げられました。

 たとえばショートステイを利用する場合、年金収入が80万円超120万円以下なら、1日あたりの食費は650円だったものが1,000円になりました。年金収入が80万円以下の場合も、これまでの日額390円から600円に、年金収入120万円超なら、650円から1,300円へと引き上げられました。施設に入所している人の食費も、年金収入120万円超であれば引き上げられます。

■預貯金が多いと食費の補助がカットされる

 また、食費の補助が受けられる基準には収入のほかに預貯金等の金額もありますが、この要件が厳しくなりました。従来は単身の場合1,000万円、夫婦で2,000万円でしたが、8月からは年収に応じて単身で預貯金額最大650万円、夫婦で最大1,650万円までに引き下げられました。つまり年金収入が少なくても、預貯金をたくさん持っていれば食費の補助が受けられなくなるわけです(厚生労働省のお知らせ⇒https://www.mhlw.go.jp/content/000334525.pdf)。

 上記の判定には、普通預金や定期預金、現金のほか、株式や国債、投資信託、資産運用として保有している金・銀などの残高も含みます。銀行や証券会社など、保有している口座の残高がわかる通帳や残高証明、インターネットの残高照会ページのコピーをもとに、時価評価で判定します。株式や投資信託のように時価が変動するものは、購入したときよりも値段が高くなっていることがありますので注意が必要です。 

 ただし、時価評価の把握が難しい宝石、絵画、骨とう品、家財は含みません。また、解約したらお金が戻ってくるような貯蓄性のある生命保険、自動車、腕時計も対象外です。加えて、判定時には上記の預貯金等から住宅ローンやカードローンといった負債を差し引いて計算します。資産が多くても負債も多い場合には、補助の対象になる可能性があります。

 もし、補助の要件から外れると、食費の金額は国が決めた定額ではなく、利用している施設が決めた金額になります。利用先によって異なりますが、平均的には日額1,445円(8月以降)という基準があります。この金額も今回の改定により引き上げられましたので、サービスを利用している施設から請求される料金が高くなる人が少なくないはずです。

■負担が重い時には軽減措置がある

 今回の介護保険の改定は、おもに収入や預貯金が多い人が対象です。基準を下回る人への補助に変更はありません。しかし食費のように日々かかるお金は、年金生活にはけっして少なくない負担です。介護はほかにも多様なお金がかかります。そこで、収入や資産が少ない人には負担を軽減する措置があります。

 たとえば住民税が非課税、年金収入から施設での介護サービス費用を差し引いた手取りの年収が80万円以下、世帯の預貯金が450万円以下といった要件を満たしている場合には、食費や施設の居住費が減額される特例措置があります。世帯収入や資産がさらに低い場合には、別途の負担軽減を受けられることがあります。

 収入や預貯金の状況は、長い老後の生活で変わってくることもあります。生活費に使ううちに預貯金が減ってくると、あてはまる要件が変わる可能性があります。家計に無理なく介護サービスを利用できるよう、お金の面で不安があるときにはお住まいの地域の窓口に相談してみてもいいですね。


■加藤梨里(かとう・りり)ファイナンシャルプランナー(CFP®)、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー、マネーステップオフィス株式会社代表。保険会社、信託銀行、ファイナンシャルプランナー会社を経て独立。専門は保険、ライフプラン、健康とお金。大学では健康増進について研究活動を行い、健康経営のコンサルティング支援をした企業が中小企業のトップ500「ブライト500」に認定。

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