【いまさら聞けない高血圧⑤】“減塩”は家族全体の健康守る

 国内の患者数およそ4300万人--身近で深刻な病でありながら、いまさら聞けない高血圧の基礎知識を、大阪大学大学院教授の楽木宏実医師の解説で学んできた。最終回は、日常生活で実践したい取り組みをご紹介する。

ベースは生活習慣の改善

 高血圧を上手にコントロールするためのベースラインは「生活習慣の改善」にあります。これを確実に実践した上で、必要に応じて薬を使っていくのが本来の姿。薬よりも生活習慣の見直しが先なのです。何から手を付ければいいのか分からない、という人もいることでしょう。

 大きく分けると、次の3つの取り組みが重要になります。

 (1)食生活の見直し

 (2)運動

 (3)肥満の解消

 「食生活の見直し」の柱は「減塩」です。

 濃い味に慣れてしまった人には高いハードルに見えるかもしれませんが考え方次第です。

野菜食べて血圧安定

 家族で食卓を囲み、同じ料理を食べていることを考えると、高血圧のリスクを家族全員で分け合っていることになります。あなた1人のことではなく、奥さんや子どものことを思えば、減塩に挑戦してみる価値もあるのではないでしょうか。

 また、なるべく野菜を積極的に食べるようにしましょう。これは「カリウムの補給」が目的です。カリウムを豊富に摂取することで、体内のナトリウムが排出されやすくなり、血圧の安定につながります。

 ただし、腎臓に病気がある人のカリウム摂取は危険です。医師や栄養士の指示に従って進めてください。

汗ばむ程度に早歩き、高齢者はできる範囲で

 2番目の「運動」は、若い人なら「汗ばむ程度の早歩き」を30~60分、が目標です。電車1駅以上の距離を歩く目安で取り組むといいでしょう。

 高齢でひざに問題がある人は無理をする必要はありません。自分のペースで構わないので、できる範囲で歩くことを心がけましょう。それだけでも体のさび付きを防ぎ、サルコペニアやフレイルの予防に役立ちます。

 よく、スクワットが生活習慣病予防にいい、という話を耳にします。スクワットに限らず、筋肉に負荷をかける運動を繰り返す「レジスタンス運動」には、一時的に血圧を下げる作用が認められています。

 現状ではこれが長期的な血圧の安定に関係するのか、あるいは心臓病の予防に役立つのか、という点までは明らかになってはいませんが、少なくとも悪さをすることはありません。体を動かせるうちは動かすことが重要なのです。

 3つ目の「肥満の解消」も、若い人と高齢者は分けて考える必要があります。

 若い人の血圧のコントロールを考える上では、肥満よりも痩せている方が確実に有利です。一方で高齢者の場合は、「小太りでもいい」という報告もあります。

 ただ、いずれにしても「肥満」が危険であることは変わりません。日々の血圧測定と合わせて、体重の測定も心がけてほしいところです。

 このように血圧の安定化は、日常の「ちょっとしたこと」の積み重ねで実現します。決して派手な取り組みではないけれど、毎日続けることで心臓や血管をいたわり、あなたの健康維持につながるのです。ぜひ今日から実践してください。あなたとあなたの家族の健康維持に、きっと役立つはずです。(構成・長田昭二)

=おわり

■楽木宏実(らくぎ・ひろみ) 大阪大学大学院老年・総合内科学教授。1984年、大阪大学医学部卒業。89~91年、米ハーバード大学、スタンフォード大学留学。大阪大学助手、講師、助教授を経て2007年から教授。日本老年医学会前理事長。現在、日本高血圧学会理事長を務める。一貫して高血圧学と老年医学の臨床と研究に従事し、多くのガイドライン作成にかかわっている。

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