【いまさら聞けない高血圧④】高血圧治療で薬を一生飲み続ける理由

 何も対策を講じないで放置すれば、その先に脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる病気が待っている高血圧。では具体的にどんな治療が必要なのだろう。そしてその治療は一生続くものなのか-。高血圧治療の第一人者、大阪大学大学院教授の楽木宏実医師が解説する。

治療薬は4つに分類

 高血圧の治療は、生活習慣を見直すことが第一ですが、多くは「投薬」が必要になります。

 高血圧が起きる仕組みは、「腎臓が塩分を正常に排出できなくて血管に負担がかかる」「血管の過剰な反応や動脈硬化で血行不良になる」「血行不良でも心臓が頑張って圧が高まる」の3つの要素が組み合わさったもの。したがって、高血圧治療の薬はこの3つの要素のいずれかに作用するように作られています。

 いま使われている高血圧治療薬は、大きく次の4つに分類されます。

 (1)腎臓からしっかり塩分を排出するように作用する薬

 (2)血管を拡張して血流の抵抗を減らす薬

 (3)腎臓と血管と心臓の関係を調整するホルモンに働きかける薬

 (4)心臓に「頑張らなくていいよ」となだめてあげる薬

 (2)と(3)がよく使われていますが、日本では食塩を多くとっている人が多いので(1)も重要です。

 通常は単体で使われるより、2~3種類の薬を組み合わせることが多く、特に、(1)(2)(3)は組み合わせに適した薬です。

 多くのクリニックの先生方は、専門に関わらず高血圧の勉強をされています。また薬の選び方も、多少の個人差はありますが、心臓や腎臓に大きな持病がなければ標準的な治療法があるので、お任せしてください。

薬で正常値内にコントロールできる

 ガイドラインに従って処方された薬を使ってみて、もし自分に合わなければ変更すればいいだけのこと。「合わない」と言っても、大きな事故の心配はほとんどありません。どれも安全な薬です。

 さらに、同じ薬を長期間使っても、安全性に変わりがなく、効果も低減しないのが特徴です。

 そのため高血圧の治療を受けている人には、10年、20年という単位で同じ薬を使い続けている人が珍しくありません。薬をやめれば血圧は上がってしまうけれど、飲み続けている限り正常値内でコントロールし続けることができるのです。

 これは、その薬が血圧を上げる根本原因を治しているわけではないものの、血圧を高めるために働いている主要な部分を制御し、血管や臓器の反応性を正常な状態に近づけていることによるもの、と考えることができます。

 もちろん、若い人や一般的な方法で血圧が下がらない人では、原因を調べることを含めて専門医療が必要なこともあります。

 薬を一生飲み続ける-と聞くと、ネガティブな印象を持つ人もいますが、薬を飲み続けることで脳卒中や心筋梗塞を防ぐことができるのなら、決して悪いことではないのではないでしょうか。

 ちなみに、軽度の高血圧であれば、肥満の解消や食生活を見直すことで、薬を減らしたり、休薬できる人もいます。もちろんこれは医師の指示に従って安全に進める必要がありますが、高血圧治療にも自分なりの「目標」を設けることは可能なのです。

 こうした目標達成のためには、日常生活の改善が絶対に不可欠です。次回・最終回は、高血圧でも長生きするために実践したい生活習慣について解説します。 (構成・長田昭二)

■楽木宏実(らくぎ・ひろみ) 大阪大学大学院老年・総合内科学教授。1984年、大阪大学医学部卒業。89~91年、米ハーバード大学、スタンフォード大学留学。大阪大学助手、講師、助教授を経て2007年から教授。日本老年医学会前理事長。現在、日本高血圧学会理事長を務める。一貫して高血圧学と老年医学の臨床と研究に従事し、多くのガイドライン作成にかかわっている。

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