【いまさら聞けない高血圧②】塩分過剰摂取で起きる動脈硬化が要因に 腎臓は「沈黙の臓器」

 高血圧を放置すると、その先に重大な病気が待っている-。それは何となく知っていても、その実態を知らないと治療にも真剣に取り組めないもの。大阪大学大学院教授の楽木宏実医師が徹底解説する連載の2回目は、高血圧が命に関わる重大疾患を引き起こすメカニズムを話してもらおう。

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 人はなぜ高血圧になるのでしょう。いろいろな理由はありますが、一番の要因は動脈硬化です。

 動脈硬化とは、文字通り動脈が硬くなっていくこと。使わなくなったゴムホースを日の当たるところに放置しておくと、いずれ劣化して硬くなります。あれと同じことが血管に起きるのが動脈硬化です。

 血管は日に当たることはありませんが、例えば必要以上の塩分を摂取し続けていると、さまざまな形で細胞が傷つき血管を劣化させていくのです。

 血管の劣化が進むと、血管の内側に粥腫(じゅくしゅ=アテロームともいう)と呼ばれる「かす」のようなものができていきます。この粥腫自体は脆(もろ)くて、押せば簡単に破れます。すると、破れたところに免疫細胞が集まってきて修復しようとするのです。

 修復されたところは盛り上がり、血流を阻害します。盛り上がりが大きければ血流が途絶えて心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことにもなりかねません。

 完全に血流を止めなくても、盛り上がった組織の一部が剥がれて流れていけば、その先で血管を詰まらせることもあるでしょう。これが動脈硬化の実像なのです。

 では、高血圧と動脈硬化はどのような関係があるのでしょう。

 動脈硬化は細い血管にも生じます。するとそこが硬くなって、血液の通り道が狭くなっていくのです。心臓が通常通りの圧力で血液を送り出していたのでは、その細い血管の先まで血液を流して、全身の隅々に血液を行き渡らすのに不十分になります。

 そのため心臓としては「通常以上」の圧力で血液を押し出さざるを得なくなるのです。

 つまり高血圧とは、心臓に問題があって起きる病態というより、動脈硬化によって血流が正常でなくなったことを補うために起きている現象-といえるのです。

基本の対策はやはり「減塩」

 高血圧対策の基本に「減塩」がありますが、これは血流を正常な状態に近づけ、心臓の負担を減らすための取り組みなのです。

 ちなみに高血圧の関与する疾患に「腎臓病」があります。腎臓は血液に含まれる余分な成分、つまり「ごみ」を取り出して、尿として排出する働きとともに、電解質(ナトリウムやカリウム)を正常なレベルに調整する役割を担っています。

 塩分摂取が多くて腎臓が処理するナトリウムが多い状態が続くと、腎臓が疲弊してうまく排除できなくなります。

 その結果、血圧が高い状態が続くと、疲弊した腎臓がさらに忙しくなるので、慢性腎不全に陥っていくのです。

 腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気が深刻な状態になるまで症状を出しません。そして高血圧も無症状。そのため当人が気付かないまま病気は進んでいくのです。

 これを未然に防ぐ大事なきっかけが「高血圧」の診断です。

 たとえ症状はなくても、高血圧と診断された時点で、きちんと治療に向き合えるか否かが非常に重要な分岐点となる-ということがお分かりいただけるのではないでしょうか。 (構成・長田昭二)

■楽木宏実(らくぎ・ひろみ) 大阪大学大学院老年・総合内科学教授。1984年、大阪大学医学部卒業。89~91年、米ハーバード大学、スタンフォード大学留学。大阪大学助手、講師、助教授を経て2007年から教授。日本老年医学会前理事長。現在、日本高血圧学会理事長を務める。一貫して高血圧学と老年医学の臨床と研究に従事し、多くのガイドライン作成にかかわっている。

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