【「70歳定年」どう生きるか】知力・体力の寿命「75年」超えるとがん系か血管系どちらかの疾患に… 

60歳過ぎると老化は加速

 数年前から政府は、「人生100年時代」を提唱し、それに向けた取り組みを推進してきました。この4月から施行された「70歳就業法」も、そのひとつと言っていいでしょう。「これで仕事が続けられる」と喜ぶ声もありますが、勘違いとしか言いようがありません。なぜなら、人間60歳を過ぎれば、老化のスピードは早まり、日ごとに知力も体力も落ちていくからです。

 「70歳就業法」は俗称で、正式には「高年齢者雇用安定法」の改正です。では、高齢者とはどんな人を指すのでしょうか? 日本では法的に65歳を高齢者、75歳以上を後期高齢者としていますが、国連では60歳以上を高齢者として定義し、80歳以上を後期高齢者としています。いずれにしても70歳といえば、間違いなく高齢者であり、後期高齢者は目前なのです。

 政府は「人生100年時代」を提唱しますが、私は「人生75年」と思っています。75歳で寿命が来るということではなく、現代人はそこまではある程度、知力・体力も保てるということです。これは「健康寿命」が、男性が72・12歳、女性が74・79歳ということでわかるでしょう。

 多くの患者さんを診てきた経験から言うと、75歳を境にして急速に老化します。もちろん個人差はあります。ただ、多くの人が、75歳を超えると、なんらかの疾患に見舞われます。大別すると、がん系か血管系(脳疾患、心臓疾患)のどちらかです。

 私の場合は血管系で、意外と早くやって来ました。これまで私は、50代、60代、そして70代になってからと3回にわたり狭心症に見舞われ、冠動脈の手術を受けています。「老いての病は10年ごと」と言いますが、これは本当です。10年ごとの病を乗り越えた人が長生きをしています。

 70代の病を乗り越えれば80歳に、80代の病を乗り越えれば90歳にというわけです。

50歳超えたら一度徹底検査を

 私が自分を血管系と言うのは、医者だった父も70歳で心血管破裂の発作で死んでいるからです。午前中は診察、午後は昼寝と診察という生活の中で、ある夜あっという間に逝ってしまいました。親戚を見ても、これまでの私の患者さんを見ても、血管系の疾患は遺伝的なものが多いようです。がんもまたそういう傾向があります。ですから、ご自分の家系を見て、50歳を超えたら1度は徹底した検査を受けるべきです。

 人間、60歳を過ぎるあたりから、衰えを感じるようになります。明らかに筋力が落ちます。そのため、注意すべきなのが転倒しないようにすることです。感覚の衰えは、まず、聴覚、視覚に現れますが、忘れがちなのが嗅覚です。焦げた匂いに気がつかず、火事を引き起こしたりします。

 いまの60代は昔の50代、70代は昔の60代と言います。昔に比べたら、いまの高齢者は高齢者とは呼べないと言います。ただ、これは思い込みで、医学の発達が多大な貢献をしたからに過ぎません。日本人の平均寿命は、2019年は女性が87・45歳、男性が81・41歳と、毎年のように過去最高を更新しています。しかし、そこまで生きて本当に健康な人は、そう多くありません。

 「人生100年」など、健康寿命から見たらありえません。

 2020年9月1日時点の住民基本台帳に基づく100歳以上の高齢者人口は、8万450人に過ぎません。しかも、8割以上の方々が、なんらかの疾患、認知症などを患っています。寝たきりになった方も多いのです。私は常々、「人生75年と思って生きてください」と言っています。

■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。「不要なクスリ 無用な手術」(講談社)ほか著書計67冊。

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