聖徳太子も食べた⁈ 飛鳥鍋、ルーツをめぐるロマンに味わい

牛乳を入れたスープで鶏肉や野菜を炊く飛鳥鍋。1人前だが、具材はたっぷりだ=奈良県明日香村の民宿「吉田平次郎」

 鶏がらベースのだし汁に牛乳を加え、鶏肉や野菜を入れて煮込む「飛鳥鍋」。その名の通り、飛鳥時代の遺跡がひしめく奈良県明日香村の郷土料理として伝わる。牛乳入りのスープはクセがなくまろやかで、素材のうま味を生かしたあっさりした口当たりが食欲をそそる。日本で最初に牛乳が伝来したといわれる飛鳥の都で、当時の貴族たちも食べていたかも-。そんなロマンも味わいをいっそう深めてくれる。

色は濃厚 味はあっさり

 歴史的風土を守るため開発が厳しく制限され、日本の原風景と呼ばれる景観が広がる明日香村。宿泊客の受け入れを担ってきた地元の民宿で、夕食の定番といえば、なんといっても飛鳥鍋だ。

 推古天皇(554~628年)が即位した豊浦宮(とゆらのみや)跡に近い民宿「吉田平次郎」では、白みそと合わせみそで味を調整した飛鳥鍋を提供している。

 牛乳入りの白いスープが入った鍋とともに運ばれてきたのは、大皿いっぱいの具材。鶏肉と鶏のつくね団子に、ネギ、白菜、ゴボウ、大根、春菊、シイタケ、エノキ、ニンジン…。

 1人前でこの量かと驚いていると、「昔はもっと山盛りでした」と主人の吉田邦臣さん(40)。飛鳥鍋は昭和45年の大阪万博の頃、祖父母が民宿を始めた当時からの定番メニューで、「とくに冬場のお客さんのほとんどが飛鳥鍋を希望される」と話す。

 野菜の種類は季節によって変わるが、多くは地元産。だし汁の味付けは民宿によってそれぞれ違うという。

 鍋に入れた色とりどりの食材は白く溶け込んでクリームシチューのようだが、スープの味は濃厚というより、あっさり。鶏肉と野菜のエキスが染み出し、牛乳は素材の味わいの引き立て役に徹している。

 残りのスープは、村特産米を使って雑炊に。食べ進めるほどにだし汁の滋味やうま味が増してくる。

鶏肉や野菜のうまみと牛乳が溶け合う飛鳥鍋=奈良県明日香村

ルーツの謎

 飛鳥鍋のルーツに定説はないが、牛乳の日本伝来と深い関係があるといわれる。

 平安時代初期の『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』は、飛鳥時代に唐から渡来した医師の善那(ぜんな)が、孝徳天皇に牛乳を献上したと伝え、これが始まりとされる。当時牛乳は現在のような飲料ではなく貴重な薬と認識され、献上により善那は「和薬使主(やまとのくすしのおみ)」の姓が与えられた。

 飛鳥鍋の具材の主役は鶏肉。奈良の食文化研究会の増井義久さん(61)は「養鶏技術が中国から渡来したのも、飛鳥時代の頃だった可能性が高い」と指摘する。

 遣隋使や遣唐使によって渡来文化が集積した飛鳥の都で、鶏肉を牛乳で炊く食べ方が生まれても不思議ではないというのが飛鳥時代発祥説だ。

 今も目覚ましい発掘成果が相次いでいる飛鳥時代の庭園遺跡「飛鳥京跡苑池(えんち)」(明日香村)では、さまざまな食材や薬の名が記された木簡が出土している。日本書紀に登場する貴族や万葉歌人が、もの珍しそうに飛鳥鍋を囲んでいる―。こんな情景もあったかもしれない。

牛乳めぐる伝承

 ただ、飛鳥鍋の名称が一般に広まるのは現代になってから。明日香村文化協会によると、昭和31年に現在の明日香村が誕生する前の旧飛鳥村の薮内増治郎村長が、鶏肉をヤギの乳で煮込んだ郷土料理を、近くのホテルのメニューとして考案したのがきっかけという。

 村で生まれ育った飛鳥坐(あすかにいます)神社の飛鳥弘文宮司(74)は、子供の頃のこんな思い出を語る。

 「つぶした鶏を飼っていたヤギのミルクで炊いて、すき焼きのように、しょうゆや砂糖で味付けをして食べていた。特別な日のごちそうで、おいしかった」。牛とヤギの違いはあるが、ミルクで鶏肉を煮込む独特の食文化が、飛鳥の地に根付いていたのは間違いなさそうだ。

 村には飛鳥鍋にまつわるこんな伝承もある。

 《多武峰妙楽寺(とうのみねみょうらくじ)の若い修行僧たちが苦行に耐えかね、ひそかに山麓の飛鳥の里に通い、牛乳を愛飲していた》

 《僧侶たちは、いつの間にか鶏肉を牛乳で煮て食べる術を考え、その美味強精さは山中の僧侶たちをいつも若々しく脂ぎらせ、興福寺の僧侶たちとの争いに一山の勇名をとどろかす源泉となり、また、飛鳥の乙女たちとのやさしい恋慕のきずなを結ぶ縁となった…》

 栄養たっぷりの牛乳スープが鶏や野菜のうま味を引き立てる飛鳥鍋。最初に味わったのは果たして、中世の修行僧か飛鳥時代の貴族か。古代の味とルーツをめぐるロマンを堪能できる鍋で、体も心もあたためてみては。

店ごとに味わい

 飛鳥宮跡(明日香村)を中心とする「古都飛鳥」の遺跡や名所の多くは、歩いてめぐることができる。そんな観光スポットに寄り添うように、飛鳥鍋が味わえる民宿や飲食店が点在している。

 村の老舗「めんどや」の飛鳥鍋は、赤ワインに漬けた鶏肉を使い、定番の野菜にアスパラガスやブロッコリーを加える。

 5代目店主の北海希美子さん(53)は「昆布やカツオのだしと合わせた牛乳スープは母が考案したもので、牛乳が嫌いな人にも好評です」と話す。

 飛鳥鍋は「奈良のうまいもの」として、県内の他の地域のホテルや飲食店でも提供されている。奈良ホテル(奈良市)の日本料理店では今秋に「飛鳥鍋御膳」を始めた。広告

 宿や店ごとに独自の工夫があり、それぞれに違った味わいが楽しめるのも魅力だ。

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